5月23日(金)
「移民百年祭は氏神様を祭ることから始めよう」──。パラナ日伯文化連合会(ロンドリーナ市、嶋田巧会長)は今年度中をめどに、同州ローランジア市の移民史料館そばに、「パラナ州開拓神社」を建立する。社殿のモデルは、北海道神宮(札幌市)内にある北海道開拓神社。日本移民導入に奔走した水野龍氏や杉村濬元公使のほか、第一回笠戸丸移民の通訳を担った〃通訳五人男〃ら複数を氏神様として祭る。地鎮祭が来月十五日に、予定地で開かれる。
「笠戸丸移民より今年で九十五年を迎える。昔のことは話にも上らない」。
沼田信一建立委員長は〃恩人〃の存在が忘れ去られようとしている現実をそう、悲観する。
日本の神社では、地域の功労者が祭られることもある。それに目をつけ、ブラジル版をつくるべきだと、思いついた。
昨年、訪日し、岐阜県、愛知県、秋田県などを回って神社を参詣、下調べを行った。特に、北海道開拓神社の祭神様が間宮林蔵氏、黒田清隆氏など、蝦夷地開拓に功績を残した人物であることに感銘を受けた。
面識があった元知事、堂垣内尚弘氏とも会談、設計図の送付など協力を要請。同知事は、後押すると、約束した。
日伯文化連合会は氏神様の候補者をリスト・アップ中だ。笠戸丸移民になじみの深い人物のほか、それ以前に日伯関係の橋渡し役となった人たちを中心に選ぶ。
和葡、葡和辞典の編纂を手掛けた大武和三郎氏、難破した宝久丸の乗組員を救助したブラジル練習艦隊ベンジャミン・コスタ号のアントニオ・コウティンニョ・ゴーメス・ペレーラ艦長らの名前が上がっている。
十八世紀後半に、石巻(宮城県)から江戸(東京)に向かう途中で難破、ロシア船に救われ、その後サンタ・カタリーナ州に上陸した津太夫ら四人の名も。
境内に看板を設置するなど人物紹介の場も設ける。
エンシャーダ(除草用の鍬)、プランタマキナ(手動式種蒔機)、ペネーラ(カフェー収穫用の篩)、ファオイセ(大鉈、鎌)、マッシャード(まさかり)を五種の神具として、奉納する。
沼田委員長は、「移民が苦労したといっても、農機具がなかったら仕事も出来なかった」と語り、移民に欠かせなかった農機具を後世に伝えていきたい考えだ。
さらに、二十五年、五十年後、百年後に開封する手紙を綴ってもらい、社殿に納める。
建立費捻出のため、今月二十六日より、募金活動をスタートさせる。資金も余裕が持てれば、社殿の前に狛犬も据える。五十レアル以上の寄付者には、五種の神具のミニチュアを記念品として、プレゼントする。
沼田委員長は、「神社建立で、みんなの心がまとまり、百年祭りへの励みになると思う。各種行事のおりには若い世代に、氏神様について話を聞かせたい」と、力を込める。