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ロンドニア州 グヮポレ移民の半世紀=『アマゾンに生きる』発刊

5月23日(金)

 ロンドニア州ポルトベーリョ市から南西十キロのトレーゼ・デ・セテンブロ(グヮポレ)植民地が来年九月に創設半世紀を迎える。入植五十年史「アマゾンに生きる」がこのほど、地元文協(自治会)の手により発刊された。この移住地には、第一陣(五四年)の三十家族が入植しただけで、後続は無かった。移住者の高齢化が進行。移民史編纂には、「今のうちに(移住の)証拠を歴史に残したい」との切実な思いがある。貴重な資料が日本側に寄贈されているなど、出版には多くの困難が伴った。
 グヮポレ植民地は、辻小太郎氏(汎アマゾニア日伯協会初代会長)がジェツリオ・バルガス大統領(当時)に働きかけてつくられた移住地のひとつ。
 ゴム栽培を目的に熊本県(十家族)や東京都(六家族)をはじめ、十都道府県から三十家族がここに、新天地を求めた。
 入植当初の暮らしは多難続き。「日本から持ってきた物の中でブラジル人が好むものは売り払い、ゴム植え付けのための営農資金とした」。
 銀行からも融資を受けたが間に合わなかった。
 さらに、間作に植えた陸稲やマカシェイラも価格安で、「生活資金を確保出来ず食生活にも響いていた」。
 その後、六〇年代に入って、養鶏に活路を見いだし、多角経営で植民地発展の礎を築いた。
 世代交代が進むと、都市で商業を営む人も出始めた。七、八家族が今も、移住地内に居住している。
 六人の家長が、移民史の必要性を言い出したことから、五十年史編纂は動き出した。中武幹雄著『奥アマゾンの日系人』に、経緯などが紹介されている。
 移民史編纂に力を注いだのが故・岡部隆之氏。
 移住にまつわる資料が当時既に、日本の国立国会図書館(東京都)に寄贈されていた。
 そのため、岡部氏は八〇年代の終わりごろ、日本で就労しながら図書館に通い資料を書き写す決心をした。が、訪日寸前に病に倒れ亡くなった。
 同氏からの書簡により窮状を知った中武氏は独断で、大阪府立中之島図書館と国立国会図書館に照合した。第三者への〃返却〃は無理との回答だったという。
 栗山四郎さん(六六、グヮポレ移民五十年史編纂委員長)が岡部氏の遺志を引き継いだ。
 「植民地五十年の歴史」、「追憶の譜」、「年表その他の資料」の三部構成。
 営農の変遷や日本人会の活動のほか、入植当時の日記など、内容は盛りだくさん。日伯両語。三百冊出版した。来年には記念式典の開催も予定されているという。