ホーム | 日系社会ニュース | ヴィクトル・アリトミ元駐日ペルー大使が語る=「フジモリ帰国は可能か?」=下=帰国できるかは、国民の選択と本人の決意しだい

ヴィクトル・アリトミ元駐日ペルー大使が語る=「フジモリ帰国は可能か?」=下=帰国できるかは、国民の選択と本人の決意しだい

5月23日(金)

――いまや日系の閣僚は締め出された観があるが、今後、ペルーにおいて日系閣僚が復活する見通しはあるのか?
【アリトミ氏】現政権では無理だ。しかし、次期政権下では期待できると思う。
――次期政権とは、フジモリの政権ということか?
【アリトミ氏】フジモリの政権でも、そうでなくてもだ。なぜなら、日系閣僚に寄せるペルー国民の信頼が、依然として高いからだ。残念ながら、なかには悪いことをした者がいることも認めるが…。
フジモリ政権が発足したさいに、政府が日系人のなかから信頼でき、かつ才能のある人材を登用できたのは、当時の日系人の学歴が、平均して高かったからだ。
ところが、この一〇年で日系人の学歴は相対的に低下した。日本への出稼ぎが盛んになったためだ(注:二〇〇一年末日現在の日本国内の登録ペルー人数は五万〇〇五二人。日系ペルー人の半数以上が出稼ぎ中という計算になる)。出稼ぎは仕方がないが、親御さんには「せめて子どもの進学の機会を確保して欲しい」と訴えたい。日系ペルー人の人的資源は、損失している。将来的に見れば、日系閣僚が出にくい状況にあると思う。
ほかの国、とくに南米の日系人についていえば、より積極的に政治の世界へ進む挑戦をすべきだ。自分の国を良くするために。そろそろ、そういう(多くの日系人が政治の中心に食い込む)時機に来ていると思う。
――フジモリ氏はペルーへの帰国をほのめかしているが、いったん「日本人」になったフジモリ氏がペルーに戻り、政治活動を再開することは可能なのか?
【アリトミ氏】それを決めるのは、ペルー国民だ。民主主義に従うなら、ペルー国民が決めることが尊重されるべきである。実際、先ごろ行われた世論調査でも、「評価できる過去の大統領」の第二位はフジモリだ。しかも、四一ポイントという高い支持だったと記憶している。フジモリの公式ホームページへのアクセスは、変動はあるが平均して一週間でも数千になっている。もっとも、現政権を担当する人たちが、頻繁にアクセスしているようだが。フジモリのホームページには影響力がある。だから現政権は、日本の関係当局にホームページの閉鎖を要請してきたくらいだ。
――ペルーには独特の政治風土があり、国民もそれを受け入れている。たとえば、汚職と失政、さらにテロを蔓延させたとして悪名高いアラン・ガルシア元大統領は事実上の亡命生活を送っていたが、フジモリ失脚後に帰国し、罪に問われることなく二〇〇一年の大統領選に出馬、トレド現大統領と接戦を演じた。そういう国情もあるが、フジモリ氏はすでに「日本人」と標榜しているが?
【アリトミ氏】しかし、国民が選び、本人が帰国を決めれば、誰が反対できるのか? たとえば、誰かが日本の国籍を放棄(して他の国に帰化)するという決断をした場合はどうなるのだろうか? 個人的な考えであるが、その行為自体を止めることはできないだろう。
日本のペルー進出商社の団体である三水会の「ペルーでビジネスを行う上で抱える問題点」という今年三月のアンケート結果を入手したが、それによると「国会並びに政府に経済への理解がない」「民営化の中止」「朝令暮改の法律」「法整備に行政が追いついていない」「投資への税制優遇がない」「投資意欲が減退する」「法律が理不尽で当局者に力量がない」「治安が悪い」「経済人口が少ない」などの不満があふれている。これが現政権の現状だ。ペルーには、まだまだやることが残されている。[文責:太田宏人=おおた・ひろひと、フリータイター、ペルー新報元日本語編集長、現在は日本在住]