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福岡県人会=改革派総会が無効に=渡部会長 地裁に申立て=改革派4人を告訴

5月27日(火)

 福岡県人会(渡部一誠会長)の改革派が二十四日、なにわ会館で予定していた臨時総会は午前九時半の第一回招集を前に、ジャバクアラ・サウーデ第三地方裁判所によって無効を言い渡された。渡部会長が事前に同裁に対し総会の無効を申し立てたことが認められ、現執行部の一掃を狙った改革派の計画は頓挫した。また、渡部会長はこの日、総会の発起人だった中村勲同県人会顧問ら四人を「県人会運営の邪魔をしている」などと告訴。これを受けた四人は、異議申し立ての手続き期限が三十日までと迫っていることから、連日対策に追われている。このまま争いの場を法廷に移せば長期化する可能性も否めず、改革派のなかには、渡部会長と同郷(サンパウロ州バストス市)の先輩で、元サンパウロ州高等裁判事の渡部和夫氏に非公式で調停役を打診しようとする動きも出ている。
 
 午前九時半、同裁から派遣された司法官と、渡部会長の弁護士が連れ立って現れ、臨時総会の無効を告げた。臨時総会としての効力はこれによって失しなわれ、ただの集会に。会場に早くから姿を見せていた十五人ほどの県人会員はあっけにとられた。第二回招集の午前十時には最終的に四十人弱が集まった。
 渡部会長によって告訴されたのは中村顧問のほかに、前田正信顧問、小西香月相談役、池田収一相談役の三人。告訴状には「福岡県農業実習生派遣事業」に関わった四人は、事業を通じて不当に金銭的な利益を上げ、県人会員にその会計報告を怠っていた、などとする記述もあった模様。
 これに対し、中村顧問はその場で「事実無根。経理の問題は県庁担当者から常にOKサインをもらってきた」ときっぱり否定。
 続けて、「裁判所を巻き込むケンカになったのは残念だ。しかしこのケンカは無料(ただ)で済まない。敗訴すれば費用を負担する必要もでてくる。どうしても勝たなければいけないない」。そう強く言い切ると、集まった一部の会員から拍手が起こった。
 改革派の別の幹部は、「売られたケンカは買う。親睦会としての県人会に再生するためにも会長とその側近のクビを絶対に取る」と″打倒宣言″。会場は静かな興奮に包まれた。
 リーダーシップと責任感が欠如している。人の話に聞く耳をもたない。渡部会長の非を問うと、改革派の間からはそんな批判が噴出する。「手を取り合う機会は何度もあった。初めから会長を引きずり降ろそうとしていたわけでない」。そう話すのは県人会元副会長の松尾治氏だ。「でも、話し合いの席で会長は返事もしない。わたしもそれでサジを投げました」。
 しかし、松尾氏は文協第三副会長としての立場から、文協改革委員長の渡部和夫氏(元サンパウロ州高等判事)に非公式で調停役を打診する可能性を示唆する。同じく県人会の元副会長で弁護士の平山イナシオ氏によると、「この手の裁判ならば簡略に終わるはずだが、証人を立ててなどとなると判決までに時間がかかる恐れもある」からだ。県人会の″お家騒動″を長期化させたくない、という思いは改革派のなかにも支配的だ。
 来月は戦後移住五十周年行事が相次ぐ。これに合わせて、福岡県からも親善使節団が来伯することが決まっている。今回の騒動が尾を引いていることを知れば、友好の印として千枚の鯉のぼりを持参する使節団員も立つ瀬がない。