5月28日(水)
【イスト・エー誌】ブラジル経済は、いまや船頭多くして船山に上らんとしている。金融経済の舵をとり高金利政策の継続を支持する派と、実体経済の舵をとり金利引き下げを主張する派が対立している。
前者はジルセウ官房長官とパロッシ財務相、メイレーレス中央銀行総裁、クーニャ下院議長、大統領府、さらに国際通貨基金(IMF)などの保守派。後者はアレンカール副大統領とメルカダンテ上議、マンテガ企画相、レッサ開発銀行総裁、議会などの進歩派。
大統領は経済問題を庶民に分かり易いサッカーに例えるのが恒例だが、基本金利は失業率を四カ月連続で増大させた原因となっている切実な問題だ。
パロッシ・チームの一方的な試合運びで、金利によってインフレをコントロールする古典的手法に軍配が上がった。アレンカール・チームは、死に体の実体経済に精力剤アドレナリンを一服盛らないと窒息してしまうと叫んでいる。
副大統領は二十日、ミナス州で市長会議の席上、ブラジル経済は政府の経済スタッフに任せておけないし、中銀の実力は信用できないと言明した。中銀は二十一日、副大統領に対する面当てのように金利据え置きを決定した。
インフレは沈静したが七月には電力値上げがある。インフレ抑制のため高金利は継続する必要があると政府は説明した。またインフレ沈静は卸売でのことであって、庶民の台所である小売には、まだ表れていないとしている。
借金依存体質のブラジル財政は、吉原に身を沈めた女郎衆のように借金の利子決済のために、さらに借金をするか高金利の外資を誘い込まねばならない。最近は米経済のリセッションやEUのスタグフレーション(不況下の物価高)で流通量が急減している。基本金利を下げられない理由は、色々ある。
インフレ率が本当に低下したのなら、金利据え置きは事実上の引き上げだという声が多い。大統領は生産者の味方ではなく、投機家の味方という大合唱だ。二〇〇三年の国内総生産(GDP)は二%くらいの経済成長と予測される。それは農産物輸出が奇跡的に救ったものだとしている。
工業生産だけなら、二〇〇三年はゼロかマイナス成長となるに違いない。アウキミンサンパウロ州知事は、中銀通貨審議会はリセッション対策と失業問題を忘れたらしいと批判した。五月の通貨審は経済成長と雇用創出を後回しにしたようだが、六月の通貨審に希望をつなぐと同知事は自分を慰めた。