5月28日(水)
かごしま(鹿児島)水族館ではピラルクーを飼育している。魚の飼育技術を持つ日本の水族館には、ただ魚を展示するだけでなく、繁殖させて種の保存に貢献しよう、という流れがある。その一環である。去る一月、同水族館の飼育担当、中畑勝見さん(三五)が、過去二十年間ピラルクーの研究に携わってきた大分市の研究者井手口良一さんとともに来伯、マナウスなどアマゾン川流域で、野生のピラルクーの産卵形態や生息環境などを調査した。中畑さんの夢は「鹿児島で生まれたピラルクーをいつかブラジルに返したい」。
かごしま水族館は、日本で唯一、ピラルクーの繁殖、飼育に取り組んでいる水族館。
魚は、ほかの水族館のように買わないという。買ったのでは、魚がどこでどうやって生息しているか、わからないからだ。だから、同水族館では、魚を集めるとき、漁師の船に乗せてもらい、漁師が捨てるような魚を貰い受けたり、彼らが獲らない小さな魚は自分たちが海に潜って捕ってくる。
中畑さんが、アマゾン流域にきたのは、単に買ったものを飼育し、観賞に供する、という行き方を、同水族館がしていないからだ。
野生のピラルクーは、産卵場所とか稚魚がどのように成長していくのか、など生態的にはわかっていない点が多いといわれる。
中畑さんらが、アマゾン流域で調べたところによると、ブラジルで養殖されているピラルクーは、稚魚のうちに死んでしまうものが多い。育てるという意識が薄く、放っておいて経過を見る、という、やり方。そこで、これまでの水族館での研究、体験から、ピラルクーが何を好んで食べるのか、それをどうやって与えるのか、などについて助言した。
中畑さん自身、水族館で飼育しているとはいえ、野生のピラルクーが生息する現場を見たのは初めてだった。実際見て、これはできる(今後、さらに研究をすすめることができる)と実感したそうだ。
帰国後、さっそくポ語の勉強を始めた。三月には、新たにブラジルから稚魚を導入した。今後、JICAと連携しながら、ブラジルの養殖現場と連絡をとり、かごしま水族館での養殖を続けていく。十月ごろには「アマゾン展」を開催の予定だ。鹿児島生まれのピラルクーを〃故郷の〃アマゾン川に里帰りさせるのもそんなに遠いことではなさそうだ。(JICA『国際協力』)