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デカセギ日系青年=新幹線に飛込み自殺=あまりに悲しい「母の日プレゼント」

5月30日(金)

 静岡県豊田市在住の日系ブラジル人、ファビオ・タカツさん(二四)が「母の日」の五月十一日、同県磐田市で東海道新幹線に飛び込み、自殺した。ファビオさんはドラッグ(クリスタル)の使用歴があった。二十八日付、ニッポ・ブラジル紙が報じている。
 母親のトモエ・タカツさん(五六)によると、自殺当日、クリスタルの使用はなかったが、それ以前に二度の中毒症状と多量のクリスタル使用が認められたという。兄弟のマウロ・タカツさんは「クリスタルはすでにファビオの脳と神経を蝕んでいた」と語り、「ファビオは統合失調症の前段階になっていて、精神錯乱を起こしていた」などと明かした。
 マウロさんは、兄弟が自殺の日を決めていたと確信している。「母の日のプレゼントだったのでは。ファビオは、自分が家族の重荷だと感じていたのかもしれない」。自殺当日、ファビオさんはトモエさんに、「僕がお母さんを愛していること、知っているね」と言ったという。その後、ファビオさんはタバコを買いに行くといって外出、そのまま戻らなかった。「あれが最後の別れだとは思わなかった」と息を詰まらせるトモエさん。双子の兄弟、フラヴィオさんはさらに動揺を隠せない。「感情の共鳴反応があった」とマウロさんはいう。
 タカツさん一家は日本、ブラジル両国で、全力をあげてファビオさんを支え、ドラッグ中毒に陥らないよう細心の注意を払っていた。ファビオさんは〇一年十月、ブラジルへ帰国、パラナー州クリチーバ市のドラッグ中毒患者更生施設に入所。一時は自制することができたが、再びクリスタルにはまり、再度、入所しなければならなかった。ファビオさんは今年一月、日本へ再入国した。
 トモエさんは、若者たちが同じ道を歩まないよう忠告している。「ドラッグ依存は孤独、無気力、精神分裂を引き起こして個性を失い、さらに購入するために巨額をはたく。私の息子は、誰かを傷つけたり欺いたりするためにドラッグを使ったわけではない」と訴えている。