福岡県人会の役員の間の抗争は、二つの臨時総会の招集、それを流会させる、(提訴で)つぶす――など、本来あってはならない様相を呈している。壮年から熟年に達している、分別盛りの人たちの争いだ。どう見ても得るものは何もない。苦いものが残る。反面教師にはなるが、傍(はた)から見ていると滑稽なだけだ▼県人会というものは「事業をやっている」とはいうものの、そもそもは事業などをやる団体ではなかった。同郷人が集まって、同じ訛り(なまり)でしゃべり、唄って親睦をしようというのが、原点だった。それが事業をするから、定款をつくり公認団体になろう、のあたりから、県人会によっては人事にかかわる諍いが生じ出した▼福岡県人会の場合、母県との交流は過去密なものがある。忘れてはならないのは、恩恵をこおむってきたことだ▼二十四年間にわたる母県による農業実習生の派遣、ブラジル側受け入れは、大成功事業だったといっていい。ブラジル研修OBたちは、帰国後「赤い大地の会」を結成した。毎年、新しい一行が来伯するたびに、大地の会の会員は何人になりましたか、と質した。近年は二百人余の大きな数字を挙げ、誇らしげだった。この事業が今度の抗争の発端とは情けない▼昨年は母県から和太鼓、指導者が来て、近く鯉幟である。今度はなにか〃お返し〃の番ではないのか。互いに譲るべきは譲って、玄界灘にも似た激しい、熱い血はほかで活用してほしいと思う。
(神)
03/05/30
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