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新派遣制度を開始=―JICA草の根技術協力事業―=日系社会に朗報か=農業技術者や福祉など=日本側から要望提出

5月31日(土)

 今年十月、独立行政法人に移行する国際協力事業団(JICA・移行後は国際協力機構と改称)の目玉事業として期待されている「草の根技術協力事業」。日本の地方自治体やNGO団体が自発的に開発途上国に対して行う協力事業を、JICAが支援するもの。日本から技術専門家などを呼べる制度として注目を浴びている。外務省は来年度からの県費留学生、研修生制度の補助金カットを打ち出した。民間における日伯間の関係の希薄化が懸念されている中、このJICAの新事業がこれからどう生かされていくのだろうか。

   ■事業内容■
 この事業は民間の「草の根」レベルで、日本の地域住民と相手国住民との間の、細かく密接な協力関係を育成していくことを目的にしたもの。
 JICAは相手国が求めている要望と、日本のNGO団体などが提供できる協力内容とのすりあわせする役割を担い、「草の根協力支援型」「草の根パートナー型」「地域提案型」の三つの事業形態で案件を公募している。
 それぞれの違いは、事業を提案するNGO団体の支援実績や事業費総額の違いなどが挙げられるが、「あくまでも人材を介して知識、技術、経験、制度を移転するもので、物品の寄付や施設の建設で完結してしまう事業は対象とはなっていない」と石橋隆介次長は強調する。
 ■ブラジルへの協力■
 この事業計画をブラジルで実現させるため、ABC(ブラジル国際協力庁)と話し合いを続けてきた技術協力班の佐藤洋史氏は「問題はないが、案件内容を通知すべし」という返答を受けた、という。
 公的機関を通過させる手順を簡素化させることで、事業を迅速に行うことも特色となっているこの事業だが、まだ前例もないため「これからブラジルで同事業を実現させる上で、ABCとの調整も必要」と付け加える。 
 佐藤氏によれば、現在、ブラジルを対象に提出されている案件は四つ。ほぼ内定状態というベレン管区の三件(そのうち二件は日本から調査団が来伯予定)、サンパウロ管区が一件となっている。
 例をあげると、公文書などに最適とされている「和紙」の作成技術をブラジルに伝え、どのような木がそれに適しているのかなどの調査、開発を行う事業が注目されているという。
 この事業が実現すれば、将来現地の地場産業として発展していく可能性も高く、当事業の目的に見合った最適例といえる。
■日系社会の場合■
 ではこの事業が日系社会にどう反映されていくのか。スポーツや日本語教育等は同事業の対象外となっているため、日本語教師やスポーツ指導員などは、日系社会青年ボランティアなどの他事業の管轄となる。
 考えられる案件としては、日本の農業技術者による技術移転や、今後深刻な問題となるであろう、高齢者福祉などに対しての技術協力などが挙げられる。 
 しかし、案件は日本のNGO団体などから提出されるべき性質であるため、県人会や福祉団体などの日系団体が、関係の強い地方自治体やNGO団体に働きかける必要がある。 
 要望などを提案し、同意が得られれば、案件を日本側で提出してもらう、というのが一つの手段として考えられるだろう。
 あくまでもJICAは、日本側の自発的協力を重視しているので、お互いの密接な話し合いによって、両者の希望、条件が適った上での案件提出が望まれる。 詳しい事業内容や相談は、技術協力班の佐藤氏まで。JICAブラジル事務所サンパウロ支所(電話=011・251・2655)。