6月3日(火)
【既報関連】ブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)は五月三十日、ヴィラ・マリアーナ区の栃木県人会館で代表者会議を開いた。外務省が来年度からの補助金カットを打ち出したことで、存続が危ぶまれる県費留学生・研修生制度が議題の中心となり、今後の対応が話し合われた。県連が全県人会を代表して早急に外務省など日本側への働きかけに動きたい、の意向を示したの対して、何人かの県人会長は「母県の通知がない段階での陳情は逆効果だ」「我が県はしばらく静観したい」などと反論。最終的には県連が外務省や全国都道府県知事会などの関係団体へ、各県人会が母県へそれぞれ存続に向けて活動することが確認された。
この日県連によって発表された留学生・研修生の派遣実績によると、一九五九年の岡山県を皮切りに始まったこの制度を通じて、これまで約五千百人の日系人が父祖の母国で日本文化や技術を学んだ、とされる。
県連でこの問題を検討する田畑稔留学生・研修生問題委員長は議題の冒頭、「これだけの人数を送り出したこの制度を何とか続けていきたい」と存続に向け、各県人会が一丸となることを強く求めた。
一部の県人会長が発言するに留まりがちな従来の代表者会議だが、各県人会の屋台骨を揺るがしかねない問題だけに、出席者からは熱のこもった発言が相次いだ。
口火を切った愛知県の林アンドレー会長は、自らも「留学生制度OB」であることを強くアピール。「この制度は日系社会に新しい風を吹き込むもの。皆さんも積極的に意見を出して欲しい」と呼び掛けた。
長野県の石井賢治会長は、この制度が途絶えれば母県との連絡機会が激減するとの危惧を示した。また、現在ブラジルで活躍する留学生・研修生のOBに光を当てて日本側に制度の継続を求めることを提案した。
県連が各県人会に対し、早急に母県に存続の有無を確認して欲しいと通達したのにも関わらず、大半の県人会は静観する状況にある。
母県に問い合わせした数少ない県の一つである茨城県の松本昭三会長は、年々留学生・研修生が削減されていると嘆きながらも「留学生が祖父らの育った環境や教育制度に触れる貴重な機会」だとその重要性を指摘した。また、県に対し手紙や電話で問い合わせたが「検討中」との回答しか得ていないとの現状を報告した。
また、宮崎県では、母県を訪問した副会長が自ら県庁や知事に制度の重要さと訴えたという。
林愛知県人会長は具体策として、各県人会が制度のOBの消息を早急に確認する▽留学制度のメリットをテーマにした県連主催のシンポジウムを開き、日本にアピールする▽国会議員を動かして、何とか予算化を実現する――との三項目を提案した。
早急に行動を起こすべきとの県人会長らに対し、北海道協会の谷口出穂会長は、母県からの連絡がない段階では静観するべき、と主張。「道庁から通知がないので、来年の募集も始めている。下手に刺激すると、『止める』と言われかねない」と県連の意向には従わないとの方針を示した。
同様に群馬県の高柳清会長も静観の方針。「『何も言っていないのにどうしたのか?』と県庁に思われる」と警戒感を見せた。
一方、この問題を最初に県連に提起した大分県の酒井清一会長は、「泣く子は乳をもらえる」とブラジルのことわざを引き合いに出し、母県からの通知を受ける前に行動を起こすべきだ、と強く主張。「待っていてはいけない。こちらから何度もお願いすべきだ」と全県人会が足並みを揃えて行動しようと呼びかけた。
最終的にこの日の会合では、県連が外務省や全国知事会などに、各県人会が母県にそれぞれ継続を求めることが確認された。