6月4日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十九日】国際アムネスティは二十八日、世界人権白書を発表してリオ市とサンパウロ市の治安は、アジア諸国の紛争地帯や中東のイスラエル・パレスチナ地域と同水準とした。
同団体の調査官がリオ市に滞在した今年初めの三カ月間に、リオデジャネイロ警察は三百五十人の容疑者を殺害したと報告。犯罪人によって殺害された警察官の犠牲者も最高水準にあるとした。注目されたのは、法廷外処分という処刑だ。官憲側の報告は、いつも抵抗による殺害が決まり文句となっている。
サンパウロ市の場合は昨年一月から十月までに、警察によって殺害されたのは七百三人で、一昨年の年間殺害数と同数。そのうち六百五十二人は抵抗による殺害。リオ市は昨年一月から九月までに、六百五十六人を殺害し、一昨年の年間五百九十二人を九カ月で上回った。
戦争やテロと同様にブラジルの場合でも、「目には目を」暴力は暴力をもって制すという考え方が定着している。ブラジルでは刑務所の中では拷問が、外では射殺が日常茶飯事だが、何ら問題の解決策になっていないと、アムネスティは報告している。
犯罪組織と政府要人との癒着関係に、メスが入ることはない。法務省や関係機関が面倒くさがって、スラム街などの問題には本気で取り組もうとしない。このような危険地帯における警察の対応法も、同団体が問題視している。
前政権時代に基本的人権法が制定されたが、同令は空文化している。官憲の越権行為や構造的違反行為は、全く改善の様子はない。新政権になって人権問題を、ひんぱんに叫ぶが成果を語るのは、まだ早いようだと調査官は結んでいる。
アムネスティのカン事務局長が近く、現地検分のため来伯する。事務局長は政府要人と、ラテン・アメリカの要としてのブラジルにおける暴力と官憲の対応について会談する予定だ。
同団体は、犯罪に関する法整備と対応で新政権に期待している。また所得の配分や市民を犯罪へ追いやる要因の分析などで社会組織を研究する新部署を設ける構想もある。
ブラジルにおける犯罪と暴力は、都市部の上層階級よりも低所得層にとってより深刻な問題となっている。政府の当事者は単に圧力をかけるだけで、問題を解決しようとする傾向がある。問題の本質には誰も触れようとしないと、同団体の調査官はみている。