6月10日(火)
四日午後五時過ぎ、パウリスタ大通りのサンパウロ総領事館(赤阪清隆総領事)に長蛇の列ができた。ピーク時には、総領事館の入るビルの一角をぐるり囲んだという、この人の連なり。出稼ぎビザ取得のため?まさか在外選挙登録?―。どちらも外れ。日本の文部科学省が実施する国費留学生制度の説明会に集まった学生たちだ。雨にもかかわらず三百五十人。会場に収まり切れなかった約百五十人に対しては、総領事館スタッフがビルの業務階段を利用するなどして、説明に当たった。この説明会が始まったのは三年前のこと。その参加者は一昨年が百五十人、昨年は二百人と、年を追うごとに急増している。最近は元気のない日本。でも、ブラジル人学生の目にはまだまだあこがれの国に映るようだ。
「広報活動がうまくいった。特にホームページの影響力が大きかったのでは。優秀な留学生を送ることができそう」と、総領事館の担当者は声を弾ませる。遠くはマリリア、ソロカバナからの来訪者もあった。「サントスのエスコーラ・テクニカの生徒は貸し切りバスで来た。全員が非日系でした」。
今年は非日系の占める割合が約七割近くと、例年よりも多めだったという。一九五六年に始まった留学制度はこれまで、サンパウロ総領事館内に限っては日系人の応募が目立った。しかし最近は制度の存在が広く認知され、非日系の学生数が逆転している。
マンガやアニメなど現代の日本文化に興味をもち、日本への留学を志す人も少なくないようで、会場には「マンガを下げて来られていた方も見られました」と担当者は話す。
学生には破格の高待遇も魅力だ。文部科学省は今年、国費留学生に対し、奨学金として月に十八万三百円を支給することを決めている。もちろん学費は無料。このほかに往復航空券を提供し、格安の学生寮の紹介する。まさに至れり尽くせりだ。総領事館によると、日本ほど好条件がそろっている国費留学制度は見当たらないという。
説明会は、「研究」「学部」「高等専門学校」の三つの留学制度について、それぞれのOBが、実際の体験などを語る形式で進められた。「研究」は大卒以上が条件で、毎年ブラジルの各公館から約七十人が選抜されている。一方、「学部」「高等専門学校」の選抜試験はブラジル人の学生にとっては、高いハードルとなっている。日本はブラジルに比べて大学入学までの教育期間が一年間長いためだ。
募集の締め切りは二二十七日。郵便での手続きの場合は二十日まで。詳細問い合わせは総領事館(電話287・0100)。ホームページ(www.sp.br.emb-japan.go.jp/nihongo/index.htm)でも情報が得られる。