6月11日(水)
【エポカ雑誌】家庭不和の研究でベスト・セラー作家となったデボラ・タンネン女史が、リオ市で開催された書籍ビエナールに参加するため来伯した。同女史の研究は問題の一家のメンバー全員に一週間、小型録音機を携帯してもらうことから始まった。会話から何が相手に束縛や圧力をかけるかを分析した。会話の中の言葉には隠された意味合いがあり、もめ事を避けることも繰り返すこともできると発見した。
何としても敵意を生み出す言葉は、避けるべきだ。いわれた方はもちろん、いった方も気まずい思いを心の奥に包み込む。同女史とのインタービューは、次のようなものだった。
[なぜ家庭内会話が、険悪になるか]身内には友人以上の親密度を要求するので、一方が片方を裁く。まるで裁判官が被告にものをいうようないい方をする。両人の言葉には、これまでの生活のうっ憤が込められている。口に出さなくても、音声と表情に表れる。
[日常生活で例えると]夫婦がレストランに入ってメニューを見ていると想像する。夫はステーキとフライド・ポテトを注文。妻はサーモンを勧めた。夫は不平をいうなとたしなめた。妻は不平ではないと返答した。サーモンが、夫の健康によいと思ったのだ。ここには、会話の粋を越えた隠れたメッセージがある。
[忠告はよすべきか]本人は善意の忠告や助言のつもりでも、聞いた方は批判と受け取ることがある。親子間や兄弟間、夫婦間や友人間であっても、無意識のうちに上下関係を作っている。他人の助言など聞く耳を持たぬという場合、助言は面倒な関係をつくる。
[会話が通じる良好な関係]軽い言葉を投げてみる。反応が良かったら、心配はない。相手の音声に変化があったら、余計なことはいわない。話題を変えて、「母が私に不愉快なことをいったので、私はしゃくにさわった」とさぐりを入れる。
[家庭内会話の秘訣]家庭内会話は情報交換ではない。家庭内会話には、親族といえども関係改善と支配管理の意図、将来の関係が隠されている。家族は世界で唯一の信頼できる核でもあり、他人の始まりでもある。
[母娘の関係]女性は家庭内の親密性を重要視し、内緒話を好む。内緒話は親密度を増しもするが、壊しもする。家庭内の親密度を増す考え方は、男性と女性で大きく異なるが、夫婦の場合はツーカーの関係を欠かしてはいけない。
[ツーカーの関係とは]夫妻が自動車で旅行中、こんな会話をした。妻が「車を停めて何か飲む?」といった。「ノー」夫は悪気なく答えた。しばらくして夫は、妻が小用をしたいことに気づいていった。「なぜオシッコをしたいと率直にいわないのか」妻は黙っていた。夫も小用をすることで同意を得たかったのだ。夫は小便まで、妻と付き合えるかと思った。どっちが、間違っているか。
[男女の表現法の相違]女性は謝ることに、さほど抵抗を感じない。一種の愛情表現なのだ。男性にとって謝るのは降伏宣言だ。今後も屈辱に甘んじることを意味する。男性は謝ることを拒むなら、女性を喜ばせることで穴埋めすべきだ。
[表現法相違の原因]男女の世界観の相違だ。男性は階級社会での自分の立場で、ものをみる。男性は、他人より自分が重要視されたいと願う。男性にとって人生は戦いだ。女性はネットワークの一員としてものをみる。女性にとって会話は意見の調整で、全体との同一歩調と孤立回避で自己防衛をする。女性にとって人生は、友好関係の保持だ。