6月12日(木)
赤阪清隆サンパウロ総領事(五四)が経済協力開発機構(OECD)の次期事務次長に決まった。就任は八月二十五日の予定。OECDが十一日に開いた理事会で、赤阪氏を承認した。外務省からの帰朝命令は七月後半になる見込み。十二日午後、ニッケイ新聞社のインタビューに応じた総領事は今回の人事について、「日本にとって重要なポスト。これまでも国際機関での仕事が長かったし、古巣に戻る思い」。OECDの本部はパリ郊外ブローニュの森に位置。中世の古城を改造した建築で知られる。二カ月後には、近代的なビルが立ち並ぶパウリスタ通りの執務室から、時空を越えた〃引っ越し〃となる。
OECDの事務次長は現在、四人で構成される。アメリカ、ドイツ、アイルランドの各国代表と、日本の近藤誠一氏(元外務省経済局審議官)が名を連ねている。総領事は近藤氏の後任となる。
ジョン・ストーン事務総長の勧告に基づき、世界三十カ国が加盟する理事会によって任命された。近藤氏以前に日本人が二人続いて選ばれており、「わたしが四代目」。サンパウロ総領事から国際機関の要職への転身には、「(歴代のなかでも)わたしが初めてではないか」と話した。
世界のシンクタンクとも呼ばれる国際機関だ。担当分野は未定とされるが、総領事は「自身のテーマでもある『持続可能な開発』に関わる仕事ができれば」と希望を明かした。
サンパウロでの勤務については、「楽しくやってこれたし、非常に勉強になった。離任に当たっては後ろ髪引かれる思いが強い。国際機関ではどうしても机上の空論に終わりがちだった。ここでは環境・開発・貿易そして社会格差などの分野で実践的な部分を学べた」と振り返り、次につなげたい、と意欲をみせた。
五年後には移民百周年が迫る。記念事業の話題が日系社会でもとりただされるなかで、総領事は「イビラプエラ公園で行われていた中国展には非常に刺激を受けた」。イタリアで大型の日本文化事業に携わった経験から、「国宝、重要文化財クラスのものを展示するつもりならば、五年前から企画準備を始めても早くない」と強調していた。
着任から一年七カ月が過ぎた。離任まであと二カ月余り。「これから移民祭、七月には『ジャパン・ウイークス』(日本週間)が控える。まだこれからも仕事がある」とし、残りの職務に全力を注ぐ姿勢をのぞかせた。
【OECDとは】
経済協力開発機構。世界には百五十カ国以上あるが、同機構に加盟している三十カ国は、総生産額で世界の三分の二、発展途上国援助額では五分の四を占める先進国ばかり。政治・軍事を除いた、経済・社会などのあらゆる問題を取り上げ、研究・分析し、政策提言を行なう国際機関。組織的には、各国の常駐代表が集まる理事会や約二十九ある委員会と、事務局の二つに分かれる。二千人もの職員・委員らが働くといわれる。