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日系社会の将来展望=文協新執行部=意気込み語る

6月14日(土)

 一九〇八年に笠戸丸がサントス港に入港して九十五年、日系移民たちが様ざまな苦渋を味わいながらも、培ってきた日系社会。六月十八日に移民の日を迎えるにあたり、十日、ブラジル日本文化協会の上原幸啓会長、吉岡黎明第一副会長、松尾治第三副会長、伝田英二第四副会長に移民記念事業、日系社会の展望、文協の方針などについて話を聞いた。

 日本移民記念事業
 上原(以後敬称略) 今年は九十五周年だが、私たちは、すでに五年後の百周年のことを考えている。現在、日系人のうち一世移民は一二%ほど。平均年齢は七十歳以上。二十年もすれば、五、六%に減るだろう。二世たちは、一世移民が犠牲になったことで、ブラジル中上層部に入れたことを感謝しなくては。
 吉岡 言葉も分からず、不安だらけだった一世が、自分の子どもたちへの教育は忘れなかった。その恩返しをしたい。一世たちの苦労を日系の若者に知ってもらいたい。
 松尾 十四日、百周年記念事業の準備委員会を開く。どういう団体が指導権をとるか、どんなプランをもっているか、総会にかけて賛否をとるつもり。
 文協の今後の運営方針
 上原 新しい組織では、どんな小さなことでも理事会にかけて意見を聞いて運営するつもり。もちろん、一〇〇%賛成はありえないが、少数意見を大事にしたい。
 敬老会など、今までやってきたことはそのまま続ける。これからは確実に三世、四世、五世と混血が増える。四世の六三%は混血ともいわれている。もともとブラジルは混血の国。今後は多民族ではなく、多文化の国として、日本の文化を残すことが大切。四世、五世、混血、非日系人まで、いかにして日本の文化を伝えるかを考えている。
 若者への呼び掛け
 上原 ご覧の通り、文協ビルはぼろぼろ。決して、プライドをもって、恋人を連れて来られるような場所ではない。すぐには実現できないが、若者もお年寄りも、非日系人も喜んで来られるカフェテリアをつくるとか。
 近いうちに、日系研究者協会やジャイカ研修生OB、青年商工会議所、文協青年部メンバーらを集めて、彼らが何を期待しているか聞きたい。また、お互いに知り合い、刺激し合う機会にもなるだろう。
 吉岡 若い人たちは、希望の家や憩の園など、日系福祉団体を真剣に手伝っている。ボランティアたちの意見も尊重したい。
 文協がやるべきこと
 吉岡 ブラジルからここ十数年、三十万人近くが日本へ出稼ぎに行っている。出稼ぎの子どもたちの中には、日本の学校に溶け込めず、不登校児になる子もいる。
 日本の地方自治体ごとに活動している教育ヴォランティア組織と、こちらの組織が交流できるようにしたい。また、出稼ぎ者たちに「最終的にはどこに住むか」を決めてもらい、それに則して教科書の手配をするなど検討している。
 日系の若者の日本での犯罪数は、ブラジルでの日系人犯罪数より、はるかに多いと聞く。これは教育問題にも関わってくることだと思う。
 ほかにも、日本から戻ってきた人たちの就職相談なども手懸けていきたい。
 伝田 文協はこれまで、寄付金によって成り立ってきた。しかし、これからはかなり厳しい。「他人の金を使う」という感覚は改めなければ。今後は新しい試みとして、「企業感覚」で運営していく。無駄なコピー、電気、水道、交際費をなくす浪費削減や、職員を適所に配置して円滑に働いてもらうなど、可能なことから始めたい。
 上原 新しい幹部たちは、企業経験が豊富な人もいれば、学者肌もいる。それぞれの異なった意見を信頼しあってまとめることが大事。方向付けはあと三ヵ月はかかるだろう。チームワークはできてきた。あとは挑戦あるのみ。十年計画でピシッとやるつもり。
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 「広いブラジルのなかで日系社会は〇・七%。小さなコミュニティーのなかで喧嘩は必要ない。日系社会は基本的に平和なところだから」と温和に語った上原会長。宣言の通り、十年後にその真価が問われる。