6月18日(水)
【イスト・エー誌】米州自由貿易地域(FTAA)構想で頑迷固陋な米政府の譲歩を引き出すため、ブラジル政府はメルコスル共同市場に南アフリカやインド、ロシア、中国を含めた南ブロック共同市場構想を、対抗馬として打ち出した。
セルソ・アモリン外相は新政権の外交方針について次のような抱負を語った。
[新政権の外交面での展開]南米地域結束のための積極外交は顕著。五カ月の間に、南米地域の大統領七人が来伯した。ベネズエラ外交は、越権外交だとの批判さえあったが解決に至った。メルコスルは、足並みがそろった。開発銀行(BNDES)は、従来の国内からメルコスルへ対象範囲を広げた。国連安保理へのブラジル推薦は、外交辞令の域を出ている。アフリカ外交は、南アフリカを拠点に八月のルーラ外交の露払いを行った。予想以上に期待されている。
[アフリカに期待するもの]第一は旧ポルトガル植民地には、ポルトガル語圏で共通するものがある。第二に南アフリカは、国際外交でアフリカの拠点であり、距離的にもブラジルと最も近い国。第三にアンゴラ、モザンビーク、ナミビア、サントメ・プリンシペ、ガーナは、ブラジルを兄貴分として、リーダーシップの指揮を執ることを期待している。ブラジルに途上国を引っ張って行く資金力はないが、企業経営で指導する自信があり、ポ語が育んだ文化も共通している。
[インド、中国、ロシアに関心を抱いた理由]インド外相が六月五日、来伯し南アフリカを含めた三カ国外相会議が行われた。同会議でG8に対抗する南ブロック会議の核が、形成された。エビアン・サミットが開催される前に、ルーラ・プーチン会談も行われ、ブラジルの国連安保理入りは現実味を帯びてきた。
[イラク戦争と対米関係]
ウオルフウイッツ米国防次官がヴァニテイ・フェア誌に「イラク戦争はサウジ・アラビア駐留の米軍をイラクへ移動するための武力介入で、大量破壊兵器は方便だ」と本音をしゃべった。ブラジル政府は道理を述べただけで、反米活動はしていない。対米関係は良好で、何ら変化はない。
[FTAAの二〇〇五年発足]ブラジルが憂慮するのは二〇〇五年の発足ではなく、不利な協定内容だ。交渉の方法も不都合だ。世界貿易機関(WTO)ドーハ会議で決定した農産物の補助金問題は、段階的に前向き解消とする約束をほごにされた。ブラジルはWTO訴訟や対米交渉、対欧交渉など三つの難問と同時に取り組まねばならない。
[キルチネル亜政権とブラジル]キルチネル政権の誕生は幸運だ。伯亜協調がなければ、メルコスルもない。メルコスルはブラジル外交での切り札であって、亜新政権誕生によってメルコスルの地盤は強固になる。急ぐのは政府資材の買い付けで、両政府が共通のサービス・システムを構築すること。続いて、メルコスルを拡大強化することだ。