6月18日(水)
今月四日に参議院で公職選挙法の一部改正案が可決されたことを受け、来年からサンパウロ総領事館での公館投票が実現される見通しだ。過去二回行われた在外選挙では、同総領事館など在留邦人の多い公館管轄の有権者は郵便投票のみに限られていた。
今後は一年以内とされる政令の執行を待って、公館投票と郵便投票の併用が認められる。同総領事館が現在までに受け付けた在外選挙人登録者は約一万二千八百九十人で、海外の公館中最も多い。これに次ぐニューヨークやロサンゼルス、パリなどの公館でも投票が可能となる。年内ともささやかれる衆院選の時期には難しい状況だが、来年夏の参院選までには間に合うという。
鳴り物入りで実現した在外選挙も、過去二回の投票率は三割前後といまひとつ伸び悩んでいた。理由として、郵便投票の手続きの繁雑さなどが指摘されてきた。今回の法案可決でようやく、有権者の多い公館での投票が実現されることで、投票率アップにはずみがつきそうだ。
しかし問題がないわけではない。サンパウロ総領事館の担当者は「最大で三千五百から四千人が投票に来るだろう。期間が一週間としても一日五百人からの大人数に対応しなければならない」と話す。選挙ボランティアの確保や、安全対策など懸念材料は少なくない。
高齢の移住者が多数を占める有権者への説明時間も気に掛かっている。「日本では選挙会場に入ってから出るまでの所要時間は約三分。移住者の方であれば二十分は必要かも」とみる。 在留法人にとって大きな朗報だった在外選挙制度の施行。しかし実行に移してみれば課題も出てきた。その一つが今回解決に向かったが、今度は別の懸念が生まれている。在外選挙制度の試行錯誤はまだまだ続きそうだ。