6月21日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙十九、二十日】ルーラ大統領の息子サンドロ・ルイスさん(二四)をガードしていた陸軍の軍人二人が十八日午後七時四十五分ごろ、大サンパウロ市圏サント・アンドレー市郊外で銃撃される事件が起きた。うち一人は翌十九日午前十時五分、同市市立病院で死亡した。サンドロ・ルイスさんは無事である。
死亡したのはアウシール・ジョゼ・トマージ少尉(四四)。同少尉は十八日夜、大統領の息子のガールフレンドが住むヴィラ・メタルルジカ区カウクター並木通りで、ニヴァウド・F・サントス伍長とサンドロさんの護衛に当たっていた。
大統領府がレンタルした緑のアストラ車の隣りに立っていた軍人たちは、銃を持った男二人に取り押さえられた。目撃者によると、軍人たちは私服姿で、片方の男がトマージ少尉の身体チェックをして拳銃を見つけた。男は同少尉を警官と間違え、顔面を撃った。伍長は逃走したが、手と胸部を撃たれた。
事件当時サンドロさんはガールフレンドの家の中におり、かすり傷一つ負わなかった。屋内に入ってから約三十分後、旅行の準備をしていた時に銃声を聞き、家族とともに二階の部屋へ上り、避難した。付近の住民は、二十発以上の銃声を聞いたと証言している。
男二人はアストラ車に乗って逃走したことから、警察は車両強盗だとみている。男らは同車を同市ウチンガ区で乗り捨て、ほかの車を盗んで逃走した。十九日、サンパウロ市南部エリオポリス貧民街で容疑者二人が逮捕されたが、二人が犯人だという決定的な証拠はまだ見つかっていないという。
連邦警察や法務省、警備専門家らは、ガードマンの軍人二人が気を緩ませたため、強盗の接近を許した可能性が強いと指摘。「強盗は襲い易い状況でなければ襲わない。毎日のガードで気が緩んだ時が一番危険」と専門家は説明している。大統領の家族は最近、土地感のあるサンパウロ州軍警にガードを任せることを考えていたという。
殺害されたトマージ少尉はリオ・グランデ・ド・スル州出身。三年前から大統領府のガードマンとして働いていた。軍人歴二十六年。コソボ危機で、国連平和維持軍のブラジル派遣兵士として現地で活躍したこともあった。英語の教師でもあった同少尉は、妻、十七歳の娘、十一歳の息子を残している。