6月26日(木)
〃国際協力銀行〃(JBIC)と聞いて、説明できる人は少ないだろう。現在行われているサンパウロ市内のチエテ川浚渫工事現場を通りかかると、日伯両国旗と共に握手する手のデザインが描かれている。あれがJBICの仕事の一端だ。発展途上国向けのODAを司る日本政府系金融機関というイメージも強いが、実は日本からの進出企業(=本邦企業)向けの手厚い資金融資もしている。
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の金融部会は二十四日午前十時から同講堂で、JBIC業務説明会を開催した。
「我々は日本企業の海外展開を支援しています」と、このセミナーのために来伯した和田文彦・米州地域外事審議役は強調する。企業金融部の三宅真也課長の説明によれば、日本企業が、開発途上国において、現地生産、資源開発などの事業を行う際に必要な資金の貸付・保証を行う。
ブラジル向け融資金融の実績としては今年三月現在で、八千七百六十億円の承諾実績累計がある。使用する通貨は米ドル(変動、六カ月Libor-0.3125%)、円(固定、0.50%~)、その他ユーロだてもある。当該事業に必要な資金の六割を限度とし、三~十年程度の融資期間を想定する。
案件例としては、飼料・調味料製造販売事業、ブラジル石油公社海上石油・ガス開発事業のなどの他に、在伯日系企業向け投資ツーステップローンなどがある。
ツーステップローンとは、最終的に現地の日本企業が使うことを目的として、現地金融機関やリース会社を経由する融資。現地金融機関の裁量次第で、日本の親会社の担保がいらなくなるメリットもある。
融資対象は、本邦企業の開発途上地域における事業に必要な、一年を超える長期資金。取上げ基準としては、日本企業の競争力の維持・強化、または開発途上国における事業機会の確保・創出に資する案件。また、日本企業の海外におけるマーケット確保に貢献する案件、地球環境に配慮する案件なども金利について優遇される。
三宅課長は「製造業が新規工場を立ち上げる際の工場、敷地、設備などや、事業拡大、現地への定着のための運転資金も可能です」と補足する。例えば、自動車販売用資金を現地金融機関にプールする形の融資も可能のよう。
本邦企業出資先である海外現地法人の基準は、必ずしも出資比率を重視せず、役員比率や、日本企業のコントロールの実質的なきき具合次第になる。
今セミナーの中で、特に質問が寄せられたのはポリティカルリスク(政治などの要因による経済危機、アルゼンチンの場合など)への対応だ。「もし為替が激変して一ドル六レアルになった場合、経済が再び安定化するまでの間、債務の返済に時間的な猶予を設けるなどのリスク管理は可能なのか?」。
来伯した中村誠一部長は「極めて本質的なご質問を頂いた。持ち返って、重要課題として検討したい。みなさんがご足労されている中で、我々も汗をかかなければと思っている。我々が持つブラジル政府との太いバイプを使って、本来みなさんの責に着せられない事態について何らかの対応を考えたい」とし、「これを機に、我々の存在をより身近なものと考えて頂ければありがたい」と力を込めて結んだ。
※JBICリオ駐在員事務所(西山洋平所長、浜松正之駐在員=21・2553・0817)