6月28日(土)
海外日系人協会が今年一月から三月にかけて、『日系就労者子弟の教育に関する実態調査』を行い、その結果が最近発表となった。四人に一人が兄弟間でも日本語で会話しており、三人に一人は将来も日本に住みたいと考えるなど、日系子弟の日本定住傾向が高まっているにも関わらず、六四%が小学校までで学業をあきらめている――。このままでは、日本社会で落ちこぼれながら定住することになりかねない、などの厳しい現状が浮き彫りにされた。
同調査によれば現在、日本国内には、五~十四歳までのブラジル子弟が約二万三千人いる。うち、日本の学校に在籍する児童生徒は五〇%、ブラジル人学校で学ぶ児童生徒は二〇%、不就学と考えられる児童生徒は残りの三〇%と推計できるという。
日本のブラジル人学校協会(AEBJ)が〇三年二月に発表した統計では、全国に五十一校あり、在籍生は四千七百六十二人を数える。規模はマンションの一室から、ピタゴラスのような複数の分校を持つ大規模校まで様々だが、児童生徒一人当たり五~六万円/月の月謝をとっている。
うち二十三校はブラジル政府公認校だが、日本からは学校法人と認められておらず、ブラジル政府未公認校同様に〃企業〃として法人税を払わなくてはならないので、学費が高い理由となっている。
この調査は、十三県に在住するブラジル、ペルー、パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアなどの子弟百五十人にアンケートしたもの。全体の約六割が三世、ついで二割が二世、四世が十七%になっている。年齢は十三~十五歳が三一%、次に十~十二歳が二七%、十九歳以上が一三%だ。
初来日年齢は〇~三歳と四~六歳がそれぞれ二三%、六~九歳が二〇%になっている。日本滞在年数は十年以上が一番多く二八%。七~十年が二一%、そして五~六年が一八%だ。七割近い日系子弟が九歳以前に来日して、五年以上日本に住んでいることを考えれば、彼らの人生体験の約半分を日本が占めていることが推測される。
最も使いやすい言語としては、母国語が五割、日本語が三割、どちらも可が一七%。両親との会話は、母国語が六二%、日本語が一五%、両方を混ぜるが二二%。兄弟同士の会話は、母国語が四六%、日本語が二三%、両方を混ぜるが一九%。親とは母国語を使うが、兄弟では日本語を使う割合が高くなる様子が伺える。
「現在暮らしたい国」は四四%が日本と答えており、ついで母国が四一%。「将来住みたい国」は母国が最も多く五三%、ついで日本が三四%。「今のところは日本に住み、将来は母国が基本だが、すでに三人に一人は将来も日本に住みたいと考えている」という日本定住傾向の高さを裏付ける数字だ。
「日本の学校に何年まで行ったか」の問いで最も多い回答は、「行ってない」が二一%、保育・幼稚園が五%、小学校が三八%、中学校が一七%、高校が一五%、大学が一・三%となっている。
デカセギ子弟の六四%が小学校までで日本の学校を辞めている。日本人の若者世代の二人に一人が大学・短大に進学している現状からすれば、デカセギ子弟の大学進学者は百人に一人という現状が継続されるのなら、かなり悲惨な数字だ。
このような状況に日本側では、外国人集住地域なら比較的対応しやすいが、デカセギ子弟の大半は全国津々浦々に散らばっている。全国の学校の四七%には、日本語指導が必要な外国籍児童生徒は一人しかいない。
同報告書は「将来の職業選択の幅を持たせるためにも、高校進学の可能性を日系人子弟が留保できる環境をもっと作る必要がある」とし、子ども、親、学校という三者間のコミュニケーションが大きく不足していると指摘する。
日系人が多い群馬県太田市では、小中高一貫で英語を使った授業を行う「外国語教育特区」を規制緩和の一環として政府に申請している動きを、報告書の結論として紹介した。