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移住坂 神戸と海外移住(終)=旧移民収容所を活用=海外日系人会館建設へ

7月8日(火)

 神戸で今進めている海外移住者顕彰事業は「神戸港移民船乗船記念碑碑」、「移住坂」、「海外日系人会館」の三事業(「神戸移住三点セット」)。神戸のまちを上げて、広報、啓発事業を実施し、海外日系人と祖国日本を結びつけるための町としたい。
 その最初の事業、移民船乗船記念碑が、二〇〇一年四月、メリケンパークに完成し、続いて、かつて、移住者が埠頭の移民船に徒歩でむかった歴史的坂道「移住坂」の整備が、神戸市の手で進められている。
 トアロードのひとつ西のこの坂道、諏訪山山麓の旧国立移民収容所から、城が口筋、鯉川筋、穴門筋をまっすぐ一気に港へと下る。神戸の海外移住の歴史を刻むこの坂道は、石川達三『蒼氓』にも登場している、世界に通じる坂道だ。
 移住坂の中間点、JR元町駅東南口広場には、平成十三(二〇〇一)年十二月、「移住者が歩いた道」モニュメントが建てられ、ブラジルの木イッペーが植えられた。ここに建設された交番も、ブラジルの教会をイメージしたデザインとなった。
 今後、移住坂には、神戸の移住の歴史を紹介する案内板、海外移住者が祖国への思いを寄せた句碑などが整備され、国際都市神戸の歴史を象徴する坂道となり、山手から港まで真っ直ぐ下る、新しい観光ルートにもなるだろう。
 次の目標は、いよいよ、「海外日系人会館」だ。旧移民収容所を活用し、世界中の日系人の祖国・日本の拠点となる会館とすることをめざしている。目標年次は二〇〇八年、「第一回ブラジル移民船・笠戸丸神戸出航百年」という節目の年である。乗船記念碑の完成で、世界中の日系人の目が神戸に集まっている。記念碑建立運動を通じて培った海外日系人との人脈・連帯感もあり、外務省も注目している。地元の力を、次の目標・海外日系人会館の実現に向けて結集し、国に実現を働きかけていきたい。
(おわり)

■移住坂 神戸と海外移住(1)=履きなれない靴で=収容所(当時)から埠頭へ

■移住坂 神戸と海外移住(2)=岸壁は涙、涙の家族=万歳絶叫、学友見送る学生達

■移住坂 神戸と海外移住(3)=はしけで笠戸丸に乗船=大きな岸壁なかったので

■移住坂 神戸と海外移住(4)=国立移民収容所の業務開始で=移民宿の経営深刻に

■移住坂 神戸と海外移住(5)=温く受け入れた神戸市民=「移民さん」身近な存在 

■移住坂 神戸と海外移住(6)=収容所と対象的な建物=上流階級の「トア・ホテル」

■移住坂 神戸と海外移住(7)=移民宿から収容所へ=開所日、乗用車で乗りつけた

■移住坂 神戸と海外移住(8)=憎まれ役だった医官=食堂は火事場のような騒ぎ

■移住坂 神戸と海外移住(9)=予防注射は嫌われたが=熱心だったポ語の勉強

■移住坂 神戸と海外移住(10)=渡航費は大人200円28年=乗船前夜、慰安の映画会

■移住坂 神戸と海外移住(11)=収容所第1期生の旅立ち=2キロを700人の隊列

■移住坂 神戸と海外移住(12)=たびたび変った名称=収容所、歴史とともに

■移住坂 神戸と海外移住(13)=01年乗船記念碑が完成=留学生、就労者ら見学に

■移住坂 神戸と海外移住(終)=旧移民収容所を活用=海外日系人会館建設へ