7月12日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】司法府と立法府の圧力で年金の全額支給を容認したジルセウ官房長官とベルゾイニ社会保障相は政府と党を二分させた。まずパロッシ財務相は十日、政府の容認は年金改革の根本を覆すものとして抗議した。議会では、改革原案を固守する議員連盟が組織された。州では、バスコンセロス・ペルナンブッコ知事やソウト・バイア知事を中心に原案堅持を訴える知事連合が結成された。
大統領府が容認した年金の全額支給案は、政府と与党を賛否両論で分裂させた。また譲歩で改革原案を固守する議員らは激怒し、〃議員特別部隊〃を結成した。ブラジルは、いまだ特権階級が支配する国で下層階級は無期懲役のままでしんぎんしていると抗議した。
パロッシ財務相は、譲歩反対の意志を強く表明して十五日、善後策打ち合わせのため外遊中のルーラ大統領をマドリードへ訪ねる予定。譲歩案による社会保障院の経費軽減よりも、譲歩が改革の精神をわい曲し経済政策をほんろうする結果を招くとして譲れない一線だと、同相は述べた。
マンテガ企画相をはじめ経済スタッフは、譲歩も後退もないと様子見の状態にある。しかしブラジル経済の基盤が大きく損なわれるのは、確実としている。
年金改革プロセスの一部始終に立ち会ったクーニャ下院議長は、原案通りの可決〃夢実現〃は困難と認識していたはずだと抗弁した。社会保障院の累積赤字に歯止めを掛けることが、目的ではないかと述べた。
年金改革原案を大きく修正容認したことで、金融市場は悲観的反応を示した。ドル通貨は一・一二%上げ、二・八九二レアルとなった。カントリー・リスクも〇・二五%上げ、八〇八ポイントヘ。修正容認も決定ではないので、何がどう修正されるのか市場は様子見。
リスボンに滞在中の大統領は、政府の年金改革譲歩の報に接し改革は最後の追い込みで、本番にさしかかったとみた。改革案を法令の枠にはめ適合努力をせよと、連立与党議員に指令した。大統領は国会で改革原案を解体し、いじり回すのを恐れている。いかなる譲歩や変更をも、州知事の承諾を受けるように指示した。
政府は向こう二十年に、社会保障院の累積赤字五百七億レアルを決済する予定だ。下院法制委員会のブラント議長(PFL)は、原案修正は骨抜き改革となり、新規採用の公務員にも譲歩の可能性を示唆することで、根本的誤りと指摘した。
同議長は前政権で社会保障相を務め、年金改革は政府の問題ではなく国家の問題であると強調した。PT政権が年金改革の必要性を理解していないため、最高裁の圧力に抵抗しきれなかったのだと批判した。
一方、党籍はく奪が懸念されているエロイザ・エレーナ上議(PT)は、上院委員会の党代表から降りているが、政府が容易に最高裁圧力に譲歩したことを「勇猛なライオンも、裁判官の威圧の前では猫に変ぼうする」と皮肉った。