7月15日(火)
「遅まきながら、戦後移民はコロニアに参加する機会を得た。戦後五十周年祭、そして百周年祭の機会を逃せば、戦後移民はコロニア史で語られることなく終わる――」。鈴木正威さんは力強く、参加者に向けて呼びかけた。会には百四十人近くが参加、戦後移民へ向けて多くの提言が投げかけられた。
ブラジル戦後移住五十周年祭実行委員会(中沢宏一委員長)は、十二日午後二時から、ニッケイ・パラセ・ホテルで第三回記念講演会を催した。「戦後移住五十年の総括―その評価と反省」をメインテーマに、サンパウロ人文科学研究所の宮尾進前所長、鈴木正威理事、JICAサンパウロ支所の小松雹玄支所長がそれぞれ講演した。
午後二時半頃から、宮尾さんが「戦後移住者の特徴とブラジル社会に与えた影響」について講演。戦前移民と比較した上で、戦後移民は、多様化した移民形態、単独移民、定着率の低さ、職業の多さを特徴としてあげた。
ブラジル社会に与えた影響に関しては、農業面での影響を評価。特に七三年からコチア産業組合中央会が行ったセラード開発が、現在ブラジル大豆生産の五〇%近くを生産していることに言及し、高く評価した。
鈴木さんは「戦後移住者としての反省と自己評価」と題して講演。
日本的家族主義、共同体意識の強さを特徴に持つコロニア団体に対して、戦後移民は価値観の相違を感じ参加意識に乏しかった。
その背景として第一に、後継者決定過程において、能力や資格ではなく〃血縁〃が重要視され、二世が優遇された場合が多かったこと。第二に、戦後移民が戦後民主主義教育の影響を受け、合理的、個人主義的、小市民的意識を持っていることを指摘した。そのため、戦後移民が勉強会、スポーツ団体、各県人会などの小規模な団体への参加に留まっていることも合わせて主張した。
これをふまえて、戦後移民が五十周年祭実行委員会として、自主的に行動をおこしたことを評価。今回の五十周年祭を、百周年に向けて実績を作る機会と位置付けた。
最後に小松さんは「戦後移住者の日系社会における責任と役割」と題した講演を行った。日系社会に参画しようと言う意識改革と、発信しようとする能力として提案書の作成能力をつけることを提案した。