今年一番の冷え込みとなった先週末。新聞で久しぶりに「テーラ・ダ・ガロア」の文句をみかけた。霧のサンパウロ。古き良き時代のこの街を偲ぶ言い回しでもある。
都市開発が進み街路の樹木も減った近年は霧の日もめっきり少なくなり、代わって街には犯罪が目立ち始めた。「霧が晴れ、白昼の下、すべての悲惨は見出される」(フランクル『夜と霧』)。そんな気分だ。
年間四十億レアル。犯罪撲滅のために費やされる国家予算とされる。その割に―、「命の値段が安い」。十三日付タルデ紙は前途ある三人の日系学生が最近殺害されたことを挙げ、非難した。
命は地球より重い、という。だからといって文字通り、自然環境を人命より軽視するわけにいかないところが難しい。
霧と平和が同居した頃のサンパウロが追憶の中でにじむ。 (大)
03/07/15