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「コロニア語は面白い」=大阪大学のブラジル人研究者

7月18日(金)

 「どういうプロセスを経て、コードスイッチ(言葉の置き換え)が行われるのかが非常に興味深いですね」
 コロニア語を修士課程の研究対象に選んだレオナルド・メロさんの日本語からは、真面目な人柄とその研究に対する真摯さが伝わってくる。
 現在、大阪大学修士課程の二年生だが、二十二日から行われる同大学のコロニア語調査研究プロジェクトに参加するため、十四日から里帰りしている。
 もちろん自身の研究課題である「小説におけるコロニア語」の参考文献の収集も兼ねており、人文研の本棚をにらみながら、「想像していたよりありますね。コロニア小説選集は、とても貴重な資料。来週は沼田信一さんに会いたいと思っているんですよ」。

 レオナルドさんはリオ州出身の二十七歳。友人がきっかけで、高校二年の時に日本語を学び始めた。
 もともと語学を勉強するのが大好きだったレオナルドさん。すっかり日本語の魅力に取り付かれ、リオ連邦大学に進んでからは、二宮ソニア教授のもと四年間日本語を専攻する。
 〇○年十月から大阪大学に留学、日本語の動詞についての研究を行ってきた。日系社会のなかでしか使われないコロニア語の存在はかつてから知っていたが、「名詞だけでなく〃fuma〃してもいいですか?」といった動詞にまで、多言語が混ざってくるところが、面白い」とレオナルドさんはその魅力を語る。
 「『コロニアの日本語』を話すデカセギ日系人が『日本の日本語』にとまどったりするのも不思議な現象ですよね」とも。
 その話し振りからは〃研究一筋〃といった感さえ受けるが、毎週火曜日に二時間、大阪FMの番組「CO・CO・LO」でブラジルの音楽や文化などの紹介をするなどDJとしての顔も持っている。
 「日本の音楽ではJ―POPなんかよく聴きますね。MISIAが今、気にいってるかな」。
 一人暮らしだが、食事などは「家でご飯だけ炊いて、おかずはスーパーなんかで買って食べてます」と日本の学生と変わりない。 修士課程は来年三月に終える予定で、「その後は博士課程に進みたい」とその希望を話すレオナルドさん。
 そうなると、どうしても日本の滞在も長くなるが、「母も一度日本を訪れた後は僕がしたいことを理解して、今は応援してくれています。修士課程が終わった時の卒業式には、母をもう一度、日本に呼びたいと思っています」と話す。
 その瞬間、レオナルドさんの顔は研究者の顔から、母親思いの息子の顔へと変わる。
 まだ、日本でも日系コロニア語研究で学位取得という例はないという。その先駈けになるかも知れないレオナルドさんは、来月三月まで、資料収集やコロニア語調査に奔走する予定だ。