7月19日(土)
「コロニア総歌手」と表現されることもある日系コミュニティーのカラオケ熱。毎週末、サンパウロ市内外で大会が開かれ、延べ数千人が出演すると言われる。歌謡団体の増加で大会日程がかちあい、「満足のいく出演者数を集められない」といった主催者の悲鳴もよく聞く。かつては、招待状を送るだけで、申し込みが十分に入ってきた。が、今は、出演者が好みの大会を選ぶ時代。主催者はあの手この手を使って〃集客合戦〃を繰り広げているようだ。
「NAK DO BRASIL主催の援協支援歌謡祭が五、六両日、静岡県人会で開催された。総勢×百人が出演。収益金×万レアルはその場で援協に寄付された…」。
歌謡祭の盛況ぶりは後日、新聞紙上を賑わすはずだった。だが、この夢ははかなくも砕けた。
カラオケ大会が両日、サンパウロ市、近郊十三カ所で開かれ、競合してしまったのだ。出演者を十分に揃えることが出来ず、結局、期日を十二月二十七、二十八両日に延期した。
内輪の行事なら赤字を出しても構わなかったが、この歌謡祭は慈善事業。寄付を渡さなければならなかった。
しかも、贈り先は援協傘下のサントス厚生ホームとカンポス桜ホームの二施設。それ相応の額が求められた。
日系でも有力の歌謡団体であるNAKはこれまで、憩の園や希望の家を支援するための歌謡祭を企画。一度も中止、延期をしたことはなかった。
NAKの役員の一人は、「今回は本当にこたえました」と語り、苦渋の選択だったことを明かす。
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出演者を集めるには、少なくとも半年前に招待状を送付しなければならないという。審査員の選考、契約を一年前に済ませる団体もある。
各団体とも競って早く、準備を進めている。カラオケ大会は親睦の場でもあるため、一度エントリーしてしまうと、キャンセルしにくいという対人関係も背景にある。
出演料の相場は十五レアル。〃集客数〃を伸ばすため、一定年齢以上の高齢者に限って出演料の減額に踏み切る団体もある。さらに、昼食や夕食の無料サービス、食料品のプレゼントを付ける大会も。 歌謡団体の数は、サンパウロ市、近郊だけで少なくとも百五十団体あると見られている。大会への出演者が分散していく傾向にある。
だが、カラオケ事情に詳しい人の話によると、カラオケ人気に陰りが見え始めたとの見方も出ている。