何ともお恥ずかしい。あの伊東絹子さんの姓を先日のコラムで「伊藤」と打ち間違えてしまいました。あの苦しい戦争から八年。まだまだ豊かな暮らしとは縁遠い日本の人々に大いなる自信を齎した「八頭身美人」には真に申し訳無い。遯生の不注意ながらワープロやパソコンにはよくあるミスです。裏話をすれば、参考資料を読んだり見たりしながら「打った」のにーあの体たらく▼それにしても伊東絹子さんの登場は衝撃的なことだった。好き嫌いは別にして「胴長短足」は日本民族の身体的な特質と言っていい。そこへ美人の「短胴長足」が現れ世界のコンクールで入賞したのだから、皆が驚いたのも無理はない。戦後の日本人を奮い立たせたのは古橋や橋爪の水泳選手らが第一号だろう。泳ぐたびに世界新記録を樹立し「トビウオ」と呼ばれたりもする▼古橋氏らの回想によると、食べるものがなく焼き芋でもあれば上等だったそうな。それでも選手達は泳いで泳いで泳ぎまくった。記録がどうのこうのよりも忍耐とど根性が支え。これがまた国民にはよくわかるから人気が沸く。「八頭身」はこの後に続く。世界の檜舞台で大和撫子の美を披露し喝采を浴びたの新聞報道に庶民らはびっくり仰天しーそれから笑い肩を抱き合って喜ぶ▼戦後移民が出発した昭和二十八年の日本は、そんな時代だったのです。テレビの普及率はたったの三千台。とてもとても手の届かない逸品で貴重品でしたから伊東絹子さんをTV画像で鑑賞はできませんでしたが、それでも「八頭身美人」は知っていました。 (遯)
03/07/24