7月25日(金)
今年のアカデミー賞短編アニメーション部門にその作品『頭山』がノミネートされた山村浩二監督の特集上映がサンパウロで始まった。三十九カ国・五百八十六作品を紹介する南米最大のアニメーション・フェスティバル『アニマムンジ』に〃主賓〃扱いで招待された格好だ。アカデミー以後は、世界のクリエーターが頂点を目指すフランス・アヌシー国際アニメ映画祭で日本人として初めて大賞を獲得したほか、ドイツ、ハンガリー、チェコのアニメ映画祭でも一席を総ナメに。現在は凱旋帰国した『頭山』を含めた作品が日本全国の映画館を巡回中だ。相次ぐ取材と仕事依頼、多忙のさなか、海を越えて来伯した監督に話を聞いた。
「拍手の大きさはいままでにないくらい。世界一です」。先に公開されたリオでの観客の反応は熱狂的だった。上映後の質疑応答では、「日本のアニメといえば手塚治さんのようなものだと思ったが、山村さんの作品には違う魅力が溢れている」と言われた。
『頭山』の原作は落語にある。ものを捨てることができない、ケチな男の身に起こる出来事をちょっとブラックな現代風コメディーに仕上げた。語りは落語そのもの、三味線の音が小気味よく響く。CG(コンピュータ・グラフィック)は一切用いていない。自らの手による素描に頼った表現でアニメーション化しているところが特徴だ。十分程度の作品だが、制作に足掛け六年を要した。
今年十一年目を迎える『アニマ・ムンジ』には過去六回ほどエントリーしており、「親しみがある」と話す。「でもブラジルでほかに知っていることと言えば、日本移民の存在くらい」。数年前、高知県の製薬会社からブラジル移民をテーマにしたCMの仕事が舞い込み、移民史などを勉強した。結局、企画は頓挫したが、今回、サンパウロに着くなりリベルダーデを散策した。
ブラジルの印象については、「とにかくパワフル。地形とか植生とかが違うからかな。人の行動は政治や経済だけでなく、自然環境にも左右されるでしょう」と話す。
インタビュー後行われた、観客とのトークショーでは、日本語を駆使して自分の作品をPRしたり、質問したりする非日系のブラジル人の姿が目立った。その積極性に壇上の監督もたじたじの様子だった。
名古屋市出身、一九六四年生まれ。東京造形大学絵画科を卒業。現在は夫人とアニメーション制作会社を経営する。
山村浩二監督特集は二十六日午後五時からFAAP(アラゴアス街九〇三)で、二十七日も同五時からエスパソ・ウニバンコ(アウグスタ街一四七五)で上映される。入場無料、整理券を配付する。