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政府開発援助=ODAの現場を行く=――環境の世紀に――=第七回=荒廃地増えるマナウス=元の森林を回復するために

7月30日(水)

日系農協が協力する試験地で斎藤さん(右)とカウンターパートのアンテノールさん

日系農協が協力する試験地で斎藤さん(右)とカウンターパートのアンテノールさん

 ベレーンから西に向かうこと約一三〇〇キロ。南緯三度、西経六十度にアマゾナス州の州都マナウスがある。約二時間足らずの空の旅の途中、窓越しに大地を覗き込むと、一面の緑と蛇行する茶褐色の川だけが視界に飛び込んでくる。
 陸の孤島――。 かつてはアマゾン川河口にあるベレーンから、船での行き来しか手段がなかったことから人々は、マナウスをこう呼んだ。
 十九世紀末のゴム景気で繁栄した百六十万人の大都市マナウス。圧倒的なまでの樹木の存在感が「緑の地獄」の真っただ中にいることを実感させる。
 このアマゾンの中心部でJICAベレーン支所が展開するもう一つのプロジェクトが、「アマゾン森林研究計画フェーズ2」だ。
 日本の国土面積の約四倍に相当するアマゾナス州は、大部分が熱帯林で占められているが、パラー州やロンドニア州と異なり、森林消失率は約二%に過ぎない。しかしながら、九八年にマナウスとベネズエラの首都カラカスを結ぶ国道一七四号線が完成したこともあり近年、幹線道路周辺で破壊が深刻化しつつある。
 実際、プロジェクトの試験地が点在する同国道を行くと、荒廃地が目に付く。
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 紫の美しい花で知られ、アマゾン各地に自生するジャカランダ。JICAが現在行うプロジェクトは、この花の名にちなみ「ジャカランダ・プロジェクト」の別名で親しまれている。
 アマゾン各地に広がりつつある荒廃地を、元の緑豊かな森林に回復するのがプロジェクトの目的だ。
 現在第二段階(フェーズ2)にある同プロジェクトは十年近い歴史を持つ。
 一九八八年、アマゾン周辺での森林破壊はその面積の一割以上に達した。事態を重く見たブラジル政府は翌八九年に、環境・再生天然資源院(IBAMA)を創設するなど、本格的な森林管理に乗り出した。
 九二年のリオデジャネイロで行われた地球環境サミットを受け、同政府は持続可能な森林管理について日本政府に協力を要請。プロジェクト方式による技術協力が始まった。アマゾンの保護と保全を目的に五四年に創設された国立アマゾン調査研究所(INPA)とJICAによるプロジェクトで、現在日本からの長期専門家四人が派遣。マナウス市内にあるINPAを基点に、周辺六カ所に点在する試験地が活動のベースとなっている。
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 「日本の専門家は最初、アマゾンの様子が分からない。フェーズ1(第一段階)はウオームアップみたいなもの」。長期専門家の一人、斉藤昌宏さんは、環境問題における継続性の重要性を説明する。ベレーン同様、インドネシアやアフリカなどJICAが実施する熱帯林のプロジェクトは、いずれも長期にわたるのが特徴だ。
 幼いころから山歩きが好きだったという斉藤さんは、東京大学で森林植物や生態学を専攻。砂漠などの森林回復で数多くの実績を持ち、農林水産省林野庁の森林総合研究所から昨年十月に、チーフアドバイザーとして派遣された。
 アマゾンの熱帯林回復に向け、同プロジェクトでは天然林の生育特性や土壌の分析、種子の発芽条件など五項目の分野で、長期専門家とそのカウンターパート(ブラジル側共同研究者)が力を合わせている。
 「荒廃地の回復は、役に立つ木を植えて経済性のある土地にしていくしかない」と斉藤さん。
 小農支援を目指すベレーンのプロジェクト同様、マナウスでも「アグロフォレストリー(森林農業)」が
キーワードとなる。(下薗昌記記者)

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