7月31日(木)
「『み』のかたち美しいとブラジルの少女言い何回も書く眼を光らせて」―。三重県津市の公立小学校に国際化対策講師として勤務する刀根美根子さん(四四)がこのほど、短歌集、「エスフォルソ」(青磁社)を自費出版した。日本語指導などを通じてデカセギの子供たちと接する日々の中で、感じたことなどを詠んだ。外国籍の児童を受け入れる教育現場の実情が浮かび上がっている。刀根さんは短歌を趣味にしており、この二十年間に詠った歌の一部を歌集に収めた。
東京外大でポルトガル語を専攻。ブラジル日本移民などについて研究した。
娘が小学生だった頃、学校にブラジル国籍の児童が転入してきた。文化、習慣のちがいから、担任教諭が対応に右往左往。学校側から協力を求められ、通訳や翻訳など手伝った。
市の教育委員会より六年ほど前に、正式に依頼が入り、国際化対策講師に就任した。
日本語指導や通信文書の翻訳、家庭訪問のほかに、個別の相談にも乗る。「どこまでが私の仕事か悩む間も電話が鳴るよ『どれが理科の本?』」と、仕事の重責ぶりを語る。
「級友の前で初めて日本語を読めたよ、少女は胸張りて言う」。学校生活に懸命に馴染もうとする子供たちの姿に励まされた。一生懸命という意のポルトガル語を第一歌集のタイトルに選んだ。
「日本では国際理解や異文化理解といったことがよく叫ばれていますが、それは身近なところから始まるもの」。
歌友の滝友梨香さんから歌集を紹介された中田みちよさん(日本語普及センター理事)は、「デカセギの子供たちの切なさや緊迫感がよく分かります」と、読後感を述べている。