7月31日(木)
【既報関連】スザノ市で一族が経営するスザノ・ショッピングから帰宅途中に誘拐された日系企業家、行徳マルシオさん(三五)が三十日、五十六日ぶりに解放された。捜査に当たっていたサンパウロ州市警誘拐対策課など(DAS)によると、マルシオさんは解放直後の正午過ぎにUSPクリニカ病院に搬送、片耳の一部を切られ負傷しているが、生命に問題はないという。
同市内でスザノ・ショッピングを経営する行徳ジョルジさんの息子に当たるマルシオさんは、六月四日夜同ショッピングを退社直後に銃などで武装した六人組の男に拉致。犯行直後の目撃情報によると、アウディを運転していたマルシオさんは、信号交差点で二台の車に行く手を阻まれ、車内から連れ出されたという。翌五日に身代金を要求する電話があったことから、DASが誘拐事件として捜査に当たってきた。
地元でも有数の資産家として知られる父、ジョルジさんは日頃から身辺警護にも気を使っていたが、マルシオさんはボディーガードをつけることなく、高級車のアウディに乗っていたことから、周辺からはマルシオさんの無防備ぶりを指摘する声も上がっていたらしい。
事件発生後、行徳一族はスザノ市郊外に所有するシャッカラで身代金の支払いを含めた対策の検討を続けてきた。最高で四百万レレアルに上るなど身代金の額がたびたび変わったことに加え、最近ではマルシオさんの切られた耳が送りつけられるなどDASや家族による交渉は長引き、難航ぶりが伝え聞こえていた。
マルシオさんは誘拐犯によって、三十日午前十一時ごろ、ジュクイチーバとマラカトゥー間に位置するレージス・ビッテンクール高速道路上で解放。
DASによると、マルシオさんの解放は、二十九日に誘拐犯の一味と見られるアジナウド・ジアス容疑者が大サンパウロ圏のポアーで逮捕されたのがきっかけだった。ジアス容疑者の供述を元に、誘拐犯を特定したDASがマルシオさんを解放するよう求めた結果、身代金なしで解放に至った。解放現場からヘリコプターで、クリニカス病院に搬送されたマルシオさんは、約二カ月間の監禁生活でやせ細り、衰弱しているという。
汎スザノ農事文化体育協会の前会長で、行徳一家とは遠縁に当たるルイス・東スザノ市議は、解放の知らせを伝えるテレビ報道を見た家族から、マルシオさんの無事を聞かされた。「一時は色々と情報が錯綜していたが、解放されたと聞いてホッとしている」と話していた。