さきのパラナ州の移民祭の際、パラナ開拓神社建立の定礎式がローランジアで行われた。日本移民百年祭前に完成させようという計画のようだ。パラナ日伯文化連合会が決議した事業である。同州の日系社会は、まだ一世に発言力があり、リーダーシップが失われていないことがわかる▼開拓神社は、日本の各地にある氏神の社を範にしている。地域社会の開拓当時の、長い歴史のなかでの恩人・功労者を祀り、感謝する。宗教上の神々とは違う形式の神なので、一般ブラジル人にも理解してもらえる。移民子孫繁栄の底力は、氏神を祀ることによって得られる――といった考え方だ▼サンパウロの移民七十年祭、八十年祭祭典では七万人ほどの日系人を集めた。九十年祭では数千人に落ち込んだ。これは「日本離れ」が進み、一世の後を継ぐべき子孫の心の拠り所、つまり氏神の社がないせいだ、と言う▼さらに、主唱者はきついことを言った。開拓神社がつくられていて、日系人の心がもう少しまとまっていたら、戦中、戦後長い苦労を体験して来た戦後移民の五十年祭は、戦争の外にいた戦前移民が主体になって資金を拠出し、共に泣くところは泣き、共に今日あることを喜べたのではないか、と▼開拓神社の発想は興味深い。サントスの移民上陸記念碑は、神社でないのに、すでに〃参拝〃されている。神社となれば、なお増えよう。ただそれが、子孫の心の拠り所となるか否かについては、見方が分かれるだろう。(神)
03/08/01