8月5日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙四日】新政権の政治能力欠如が国際金融から懸念されていることでルーラ大統領と閣僚は二日、国民の要求に対応するため経済の回復を目的とした緊急閣議を開いた。国内の投資家は景気後退から新規投資を差し控え、海外投資家は難航する年金改革や農地占拠活動が来年度サフラに及ぼす影響などを注視していると、経済開発審議会のジェンロ議長は述べた。
政権を引き継いで七カ月間に築き上げた国際信用が、崩壊せんとしている。都市部と農村部における数々の占拠活動(MST)と政府の弱腰で年金改革が骨抜きとなったことで、投資家らが政府の政治能力を疑問視するに至った。
国際金融が指摘するブラジルの問題は、次の通り。 一、大統領がMSTの帽子を被り、好意的な態度を示したこと。
二、MSTのステジレ代表が、大農場の廃止運動を呼びかけたこと。
三、グリーンハウ下議(PT)が、フォルクスワーゲン社に占拠地の取得証明提示を命じたこと。
四、ライニャMST代表の銃器不法所持を裁判所が有罪判決に処したことで、ミランダ長官(人権庁)が批判したこと。
五、農地改革では待機組を優先すると、農地改革相自身が農地占拠を増長させるような発言をしたこと。
六、連立与党は司法官の要求で簡単に譲歩し、政治能力の欠如を露呈したこと。 七、政府与党は足並みがそろわず、政治的掛け引きが拙劣であること。
八、政府内で経済方針が分裂していること。
九、新政権では道路、港湾、電力などのインフラ整備が放置され、将来に向けた整備計画がないこと。
十、電話料金の調整を政府が拒否したため、電話関連の民営化に投資した外資系企業が法廷闘争に持ち込んだこと。
フルラン産業開発相は、インフレ抑制と国際信用の回復では奮闘したが、国民の要求に対応していないので、努力は不十分であったと評した。新政権の選出理由はマクロ経済の安定だけではなく、国民の生活安定にも応えることであったが、なおざりにしたと糾弾。インフレ抑制と経済指標を重視し、産業振興と雇用創出を軽視した経済政策が、いま問い直されている。
中央銀行が国際市場で三十億ドルの外債証券を換金しようとしたが十三億ドルしか入手できなかったことで、占拠の悪影響が及んでいると、農相が指摘した。さらに追い打ちを掛けるように一日の国際金融筋は、ブラジルの蜜月時代終えんを宣告した。
ルーラ大統領は外資流出を懸念して十五日以内に、経済回復緊急令を公布する決定をした。主な内容は、銀行供託金の低減、工業製品税(IPI)の減税、農地改革のため連邦や州所有地の即時解放、庶民住宅の建設補助金、低所得層への生活扶助、インフラ整備への官民投資奨励、工業の国際競争力強化と技術開発のための経済政策など。