8月6日(水)
【既報関連】アメリカ国内での乗り換え(トランジット)目的の乗客に、ビザを免除する「ビザなし通過プログラム」。テロ再発を防ごうと、二日から暫定的に停止した今回の措置がブラジルの「空の足」にも大きな影響を与えている。
ビザ免除プログラムの対象国となる日本と異なり、ブラジルを含む南米各国はトランジットでもアメリカのビザの取得を義務付けられる。デカセギ目的で日本に向かう日系ブラジル人はもちろん、お盆の季節を利用して里帰りを計画している在日ブラジル人にとっても、アメリカ経由という一番気軽な「足」を奪われた格好だ。
また、日系旅行代理店もキャンセルの受付や欧州周りによるルートの検討など対応に追われている。
アメリカ国内の各空港を経由して日本などに向かうブラジル国籍者(帰化人も同様)は、サンパウロなどのアメリカ総領事館で十年有効の観光査証か、三カ月有効の通過査証の取得が必要となる。手数料は観光が百米ドル、通過が百二十米ドル。また、いずれの場合も面接が必要となり、十日までは申請に対する事前申し込みは必要ないが、十日以降はあらかじめ電話予約を要する。
航空各社も対応に追われている。JALサンパウロ支店では代理店などを通じて、旅券の払い戻しかビザを取得するかのいずれかを選択してもらうよう連絡。現在、月に約千人が日本に向かうJALでは、先月名古屋便を増やしただけに「大問題です。大きなダメージ」とため息をつく。
ヴァリグ航空では、四日夕方にEメールを通じて、各旅行代理店にブラジル国籍者はビザが必要との通達を出した。四日夜のヴァリグ便では、ビザを持たない乗客は搭乗できなかったという。
また、ヴァリグ航空との共同運航便を実施している全日空は、本社からの指示を受けている段階だ。
日系旅行社などは現在、ビザの取得の手続きを勧めたり、急ぎの乗客に対してはカナダや欧州経由でのルート変更を検討している。「エアカナダは乗客が少ない事もあり、減便していた状況だけに、当分は混み合うだろう」との見方を示す。ただ、ブラジル人はカナダでの乗り換えでもビザを必要とするが、従来ならば三日ほどで発給されており、大きな混乱はないとみられている。
しかし、アリタリア(イタリア)やルフトハンザ(ドイツ)などの欧州周りについては、六月から八月がブラジルからの観光ピークに当たる事もあり、今からの予約は厳しい状況で、八月まではほぼ満席の状態が続いているという。「時間的にも金額的にもJALやヴァリグと変わらない便もあるが、予約は厳しいだろう」と旅行業関係者も指摘する。
一方、お盆の季節を利用して里帰りを考えていたデカセギには深刻で、アメリカの東京領事館ではビザ取得の面接に一カ月ほどを要する混雑ぶりだという。「どうしても急ぎの人は値段の高い欧州周りを利用せざるを得ないだろう」とは旅行代理店。
今回のプログラム停止は六十日間の暫定措置だとされているが、長引けば各方面に大きな影響を与えそうだ。アメリカ・サンパウロ総領事館への問い合わせは11・3081・6511へ。