8月7日(木)
【イスト・エー誌】ジルス・アロンソン氏(八五)
のG・アロンソン王国は一九九八年、不渡り手形を出して崩壊した。同氏の高齢での挫折、そして再起が生ける伝説となっている。
同氏は一九二〇年、二歳のときロシア移民として両親とともに渡伯した。十歳で父は病死、クリチーバ市で新聞売りをして生計を助けた。次は宝くじ売りで商才が芽生えた。上聖してハンドバッグやバンド売りの露店商を始めた。初めて商店を開店したのが、子供服の店であった。
ある日、ガスの時代到来の話を聞いた。ガス・コンロの大量購入と販売で始まった家電のG・アロンソン王国は、三十六年にわたる伝統と三十四支店のチェーンを誇る老舗であった。
裁判所から全資産を差し押さえられ、最後に残った資金で従業員の労働契約を解消し帰宅した。煩悶(はんもん)と慟哭(どうこく)の中で、のたうち回りながら発狂せんばかりであったと、同氏は述懐した。
生けるしかばねとなったある日、娘が所有する小さな店が空き家になった。これまでの経験を生かし過ちは訂正し、ささやかな家電製品の一号店で再起を果たした。新しい店は娘の名前で開業し、仕入れも娘の名前で行った。
ショッピング・センターへの出店、豪華なショー・ウインドー、内装への過剰投資に振り回され、首を絞め高い授業料を払った。いまさらながら、経営の極意を学び直すと語る。
経営の秘訣は安価な在庫品を持つことで、美しい店は二義的なこと。顧客が関心を示すのは品物と値段であって、店の飾り付けではないと悟った。多くの商人は時代だから他人がしているからと、ばかな自殺行為を行っているという。
市場の通貨流通量に敏感であること。金融関係者は流通量に敏感だが、商人は鈍感で不景気の実感がのろい。店長は常に店の空気を読み、顧客と接していること。顧客が購入した物は、顧客の帰宅前に配達する。
生来のセールスマンで机に座って帳面を見たり、財務諸表の分析は全く苦手であった。いまは苦い経験が、何でもさせるようになった。メーカーの割引があるときは、現金買いで。掛け買いのときは、支払い期限までに商品を売却する。
銀行通いは、まっぴらだ。未入金の金と入金済みの金は混ぜない。飛ぶ鳥を落とす勢いにあるときは、空飛ぶ鳥も財産のうちだが、落ち目のときは要注意だ。誰でも落ち目にあることは、認めたくないものだ。八十五歳のいまも、十七歳の青年のつもりで出直しをしていると謙虚だ。