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人生哲学の真髄語る=京セラ名誉会長=稲盛和夫氏が講演=盛和塾ブラジル十周年=特別に一般市民に開放

8月8日(金)

 人は何のために生きるのか――。日本各地で開催され、経営者をはじめ広く一般市民からも大変な好評を博している京セラ(株)名誉会長・稲盛和夫氏の講演会「市民フォーラム」が、ついにサンパウロ市でも開催されることになった。盛和塾ブラジル(板垣勝秀代表世話役)が今年十周年を迎えることを記念して、通常は塾生との対話のみだった稲盛氏来伯が、今回は一般市民に広く解放される形になった。一九五九年に京セラを創業し一流企業に育て上げたその経営哲学と、それを支える人生哲学の真髄が、本人の口から明かされる。

 「どんなベンチャービジネスの旗手も最初は〃素人〃だった」とは稲盛氏がよく使う言葉だ。
 今でこそゲーム機器で世界を席巻する任天堂も、京都でトランプや花札を作っていた会社の二代目・山内溥氏が切り開いた新境地だった。電子部品メーカーとして世界的に有名な村田製作所は戦前、従業員二、三人の小さな清水焼の窯元だった。女性下着の一流メーカー・ワコールも、塚本幸一氏がアクセサリーの行商から始めた会社。そして「身内ですら継ぐのを嫌がるような、そんな仕事をすばらしい事業に育て上げる、それこそ実はベンジャービジネスなのです」と締める。
 五九年四月に二十八人で始まった京セラを世界的な企業に育て上げ、次々と新事業に挑戦し続けた稲盛氏。八九年に従業員が一万人近くいる米国の有力電子メーカーAVX社を買収し、その後の六年間で売上げは約三倍に、利益は約六倍にしたのは有名な話だ。日本的であるだけに留まらず、稲盛哲学が世界に通じることを実証した。
 その経営哲学に影響を受ける若手経営者は多く、八〇年に京都青年会議所の青年経営塾で講演したのをきっかけに盛和塾が生まれた。現在では五十五塾、三千人の経営者が参加するまでになった。
 盛和塾ブラジルは九三年二月に谷広海氏を代表世話役に発足し、以来、一回も欠かさずに毎月勉強会を重ねて十年を迎え、塾生も四十人にまで増えた。すでに稲盛氏は勉強会のために五回来伯した。「塾生は自らの会社に稲盛哲学を適用し、順調に業績を上げているところもある」と稲垣代表世話役は証言し、ブラジルでも有意義なものであることを強調する。
 通常は塾生との勉強会で終わっていたが、今回は特別に一般公開の講演。「稲盛塾長の話は決して経営ノウハウを語るものではありません。むしろ人間としての普遍的な行動規範、人間は何のために生きるのか、という哲学です」と市民フォーラムの主旨を説明。男女を問わず十七歳以上の青年にも理解できる話だという。ただし、講演はあえて日本語のみ。
 当日は日本から七十五人の塾生仲間、盛和塾パラナ(ロンドリーナ)から約二十人、盛和塾クリチーバ約二十五人も参集する予定。
 盛和塾ブラジル十周年記念サンパウロ市民フォーラム「人は何のために生きるのか」は九月六日(土)午後五時から文協大講堂で開催される。入場は無料だが、事前に整理券を入手する必要があるので、最寄りの塾生か、同塾事務局(電話=011・3253・5167)まで連絡を。