日本食料理店がサンパウロ市のレストラン界を席巻するかのように、増えて続けている昨今、寿司、刺し身のように、「餅」も非日系人に好まれているのかと思ったら、案に相違した▼最も早期に餅つき祭りを始め、現在同祭で六百キロ規模のコメをつくアニャンゲーラ日系クラブに、客の何%くらいが非日系人か、と問うと「ゼロに近い」。配偶者に非日系人がいる人が、一緒に入場するくらいがせいぜいだとは意外だった。購買などないに等しいのだろう▼同クラブの長老によれば、戦前は各地の植民地で、頻繁に餅がつかれることはなかった。日系社会で餅つきが盛んになったのは七〇年代だ。日本語学校などで運営資金捻出を目的に、あるいは、生徒に日本の風習・文化を実地で教えるために祭りが始まった。だから、現在のように食べたければ、いつでも手に入るようになったのは、ずっとこっちへ来てからだ▼ア日系クの祭りも自然に隆盛したのではなかった。二十年余り前の規模が小さかったころは手でついた。だが、若い層は継承してくれなかった。機械が導入されても、原始的な機械ではつくのを怖がった。どすんと杵を落とすタイプからプロペラ方式で蒸したコメをかき回す方式になって、危険はなくなった。蒸しゴメの桶(臼に該当)も改良された▼今ではクラブの三世代が力を合わせる。二、三世は、ゴマ餅が特に好きなそうだ。油のせいかもしれない。このあたりから、非日系人への普及の突破口が開けるのかもしれない。(神)
03/08/08