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日本の美術館と交渉、高橋さん困惑=ブラジル人画家の作品=絵=寄贈申し入れても受けてもらえない

8月14日(木)

 居間に飾っていた絵画が有名ブラジル人画家の作品──。高橋祐幸さん(七〇、岩手県出身)は三十年ほど前に、日系進出企業の社長より、油絵を一点譲り受けた。〇一年の暮れにアカデミック画家と呼ばれるGIOVANNI・OPPIDO(一九〇六─一九八八)の「VISITA MINEIRA(一四〇×九〇センチ)」であることが分かった。ミナス・ジェライス州と山梨県が姉妹県だということで、高橋さんは山梨県立美術館に寄贈を申し入れていた。だが、同美術館はフランス人画家を専門に扱っており、希望は叶わなかった。
 この絵は、鉱山を目指して、旅をするガリンペイロの後ろ姿を描いたもの。袋に詰めた銅釜が、馬の背に繋がれている。同じ場所でモデルを前方から捉えたものも存在するという。
 GIOVANNI・OPPIDOの作品は美術大学などで遠近法や明暗の描写技法を教えるための教材としてよく取り上げられる。
 東京在住のある美術商が一昨年、アルゼンチンの骨董市を見学。帰途に、高橋さん方に寄り、絵を鑑定した。
 絵の具が剥離するなど保存状態に問題があり、高橋さんは前述の美術商を通じて日本で修復してもらおうと、発送準備に取り掛かった。
 ブラジル歴史・芸術・資産保護院が、海外の公立美術館が寄贈を受けるという公文書を届けない限り持ち出しは許可できない、と指摘。引き受け先を捜すことになった。
 山梨県とミナス州は七〇年代後半に姉妹県提携を結んだ。高橋さんはこの頃、ブラジル三菱商事ベロ・オリゾンテ支店長に就いており、タンクレード・ネーベス州知事(当時)公邸で開かれた歓迎パーティに招待を受けた。
 両県、州は関係が深いということで、山梨県立美術館に白羽の矢を立てた。相手からはあっさりと、断られてしまったという。
 それなら、古里、岩手県の県立美術館だと思い直し打診した。が、こちらも日本画家のコレクションだけとつたない返事。結局、引き受け手がないまま、これまで通り自宅の居間の壁に掛けるとになった。
 高橋さんは「私が死んだら、古美術商に二束三文で売り飛ばされる」と絵画の運命にため息をついている。今後も引き続き、〃嫁ぎ先〃を捜すつもりだ。