8月14日(木)
バウルー市内で自身が所有するシャカラで七日、バウルー文協相談役の松田シゲオさん(七八、農業)が背中から血を流して倒れているのを、隣人が発見、軍警に通報した。松田さんは病院に運ばれたが、出血多量で既に死亡していた。シャカラ内が荒らされていたことから、強盗殺人事件とみて捜査していた当局は八日、事件に関わったとみられる二人組の一人、カルロス・エドゥアルド・パウロ・ソアレス容疑者(一八)を同容疑で逮捕した。残る一人の行方についても捜査中だ。
同シャカラでブドウとゴイアバを栽培していた松田さんは、数年前に妻を亡くした後一人暮らし。毎日、農作業に従事していた松田さんの姿を見かけないことを不審に思った隣のシャカラの住人が、七日夕方に松田さん宅を訪れたところ、台所のドアが壊され血まみれになっている松田さんを発見した。捜査当局は、同日朝に肩を撃たれた松田さんは発見が遅れたことで、出血多量で死亡したとみている。
軍警によると、シャカラからはビデオテープや携帯電話、小切手帳が奪われていたという。
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現地の日系社会では、日本の歌謡曲を専門とする歌手として知られ、楽団も率いた松田さんの訃報は、文協にも大きな衝撃を与えている。バウルー市で恒例となっている「盆踊り」で楽団の演奏を復活させようと、松田さんは練習を重ねていたという。事件直前の五日にも盆踊りに向けた会合に出席していたばかり。同文協のサトウ・フルタロウ会長は、「昨年と今年はアラサトゥーバの楽団を招くことになっていた。来年からは地元の楽団でと意気込んでいたのに」と貴重な存在を亡くしたと肩を落とす。バウルー市でも近年、治安が悪化する傾向にあることから、一人暮らしの松田さんを気遣う声もあったというが、長年住み慣れたシャカラを離れる意思はなかったらしい。
九日の盆踊りを前にした八日、サトウ会長らは会場を設置。昼食の場で、松田さんに対して一分間の黙祷を実施し、その死を惜しんだ。「松田さんのオメナージェンのためにも練習を続けて、来年こそは披露して欲しい」とサトウ会長は残された楽団員を激励したという。