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沖縄と世界 橋渡し 下山久さん= 「芸能の原点」移民に教わる

8月16日(土)

 「移住者の方には芸能の本質を改めて認識させてもらっています」
 平良とみさんの所属事務所「エーシーオー沖縄」取締役、下山久さんはいう。沖縄の歴史を扱った芝居「島口説(しまくづち)」、「あしびなー歌舞団」による歌と踊り。琉球芸能をブラジルに紹介して二十年以上が経つ。
 客席の移民を前にいつも痛感することがある。「人々を励ますことの出来るのが芸だ」と。「それを忘れると観念や抽象に走りがち。日本ではなかなか実感できないことです」
 出身は東京だ。七二年「本土復帰」の年から沖縄に通うようになった。「沖縄を中心にコンパスで回すと分かるが明らかに東アジア文化圏」。そんなところに物心ついたときから魅かれていた。
 サミットやNHK「ちゅらさん」以降、脚光を浴びる沖縄も当時はまだ、「本土の日本人」からの関心は薄かった。ヴァモス(何かしようよ)という意味を込めて、パモス青芸館を東京・池袋に経ちあげたのが七九年。沖縄の芸能文化をプロデュースする仕事に乗り出した。
 今年はロシアにおける日本年に当たる。平良さんら琉球芸能に携わる三十八人を率いて極東(イルクーツク、ハバロフスク)へ行くそうだ。「来年は逆に日本のロシア年。あちらの芸能人を沖縄に招き共同制作する予定がある」と話す。
 それにしても空前の沖縄ブームだ。三万近い人が昨年、住民票を県外から移した。演出家の宮本亜門さん、作家の池澤夏樹さんといった他県出身の文化人も拠点を構えている。
 沖縄への憧れはどこから生まれるのだろう。「最近日本は人生や人とのつながりと見直している時期。そんな折りNHKが沖縄の家族をテーマにドラマを製作、共感を得たことが大きいのでは」とみる。
 効率をひたすらに追いかける生活でなくスローライフ(ゆったりとした生活)―。沖縄は植生や気候だけでなく、その人生観もどことなくブラジルに似ている。「時間の感覚も近いですよね。必ず待ち合わせに遅れる『沖縄時間』というのがありまして」。
 一九四七年生まれ。