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平良とみ『ニライカナイ』公演=沖縄のククル(心)に感動=カチャーシーで盛り上がり=島唄で大合唱

8月19日(火)

 「どこに行っても、生まれ島を忘れてはいけないよー」――。NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」の〝おばぁ〟役で知られる平良とみさん、ショーロ・クラブ、若手三線奏者の大島保克さんの昔語り舞台『ニライカナイ(海の彼方の楽園)』が十六日文協、十六日沖縄県人会であった。両会場合わせて約千五百人の観客が詰め掛け、とみさんの親愛に満ちたウチナーグチ(琉球方言)に感動の涙を流した。
 十六日の第一回公演・第一部は、ショーロ・クラブのコンサートで開幕、「ゆきやなぎ」などオリジナル曲や沖縄民謡「ティンサグの花」など五曲を演奏。続いて、とみさんが登場した。
 『ニライカナイ』と題したとみさんの一人舞台は、夕涼みのなか、八重山諸島の伝説を語り聞かせる形で始まった。石垣はフゥ(父)、西表はアンマ(母)、竹富、黒、新城、小浜はチョーデー(兄弟)とした「島々は家人衆」、神司が人の流す涙はみんな清らかで美しいと悟り、涙が星砂へと変わっていく物語「星砂の伝説」は、観客の心を和ませた。
 第二部は石垣島出身の大島保克さんの島唄で始まった。昭和二十年代、移民を送り出す山原地方(本島北部)の沖縄県人が見送りに行けず、山上で狼煙をあげて別れを告げたという歌「じんとよーワルツ」。会場からは、かつての体験を思い出してか、すすり泣く声が聞こえた。
 大島さんが白保で百年前に生まれた即興曲「ナツパナ(夏花)」を唄うと、とみさんが再び登場。一人芝居「太陽の童」では、孫娘と〝おばぁ〟の心暖まる交流が、ウチナーグチ混じりで描かれた。おばぁが島を出ていく孫娘に、「島のティダガナシー(太陽神)が見守っているよ。チュバリヨヤー(頑張れよー)」と声をかけるシーンに多くの観客が心を打たれた。

 十六、十七日の両公演とも、最後は沖縄独特の踊り「カチャーシー」で締めくくられた。第一回公演で舞台近くまで躍り出た比嘉哲夫さん(二九)は沖縄県系二世。三年前の中城村費研修など、これまでに三回、沖縄に行ったことがあり、「昔から、カチャーシーを踊っていた」と満面の笑み。「沖縄のことを思い出した。とてもうれしくなった」と語っていた。
 第二回公演では開演前、「言葉がわかるかしら」と心配していた広島出身、一九六〇年移住の池部光子さん(五七)も、とみさんの優しい語りにすっかり魅了された様子。
 第二部で大島さんが竹富島の「安里屋ユンタ」を披露すると、会場からは、「さーゆいゆい」「またはーりぬ つぃんたら かぬしゃまよー」など囃子や指笛が鳴り響いた。沖縄市出身、十一歳で移住した金城清美さん(四六)も大島さんとともに客席から熱唱。とみさんのことを「私の〝おばぁ〟にそっくり」と喜んだ。
 また、二十六歳で中城村を後にした比嘉光子さん(六七)は、約十年前、母親が亡くなった際に帰郷できなかったことを回想。おばぁの孫娘に対する愛情をみて、「お母さんを思い出した。親不孝だった」と目頭を熱くした。