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司法官はブラジルの癌=政治的対決は必至=ブラジル研究家の米人が分析

8月21日(木)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】ブラジル研究家の米国人トマス・スカイドモア氏(七一)が著書「ジェトゥリオ、カステロ、タンクレッド」を刊行した。同氏は同誌のなかで、ブラジルの司法官と官僚は国民の血税をむさぼり、国の発展を妨げる寄生虫だと呼んでいる。次は同氏との一問一答だ。
 
 【PT政権の感触は】ブラジルは旧体制から新体制へ生まれ変わる過渡期に、司法官がストを示唆したり特権維持を要求するのは、植民地時代の慣習。ルーラ政権の出現は、コロネル時代の終えんとみて歓迎した。ゴウラル大統領が試みたような改革手法を、ルーラ大統領は採らないとみる。 
 【政権半年後の評価は】経済政策は古典的手法だがレアル通貨を安定させ国際信用を回復したことで評価する。ブラジル政府は多額の債務を抱えているので、これからも古典的手法を採るのが得策だ。
 【現政権への評価は】短期間に国際的評価を得たのは見事。年金改革と税制改革は正念場となる。
 【両改革への見解は】国民の血税をむさぼって高額年金で王侯貴族のように振る舞う上級官僚の定年者と司法官の処遇が、政権にとって頭痛の種になる。
 さしづめブラジルの吸血鬼のような人種だ。その親玉が最高裁長官で、まるで植民地時代。もはや法治国家の番人ではなく、特権階級の番人のようだ。ルーラ政権は、いずれ司法府と合憲性問題で対決する。
 ヴァルガス独裁政権が最高裁を中心とする特権階級を育て、政治に利用したのが始まりだ。ヴァルガス政権のツケが、いま回ってきて改革の邪魔をしているのだ。ブラジル近代化の癌(がん)といえる。これを退治するには、複雑な政治的駆け引きが必要。 
 【旧体制の解体は】社会保障院の累積赤字三百億レアルと対外債務の決済は、ブラジル経済の関門だ。これらはヴァルガス政権の置き土産で、ルーラ大統領宿願の社会改革を実現する前に解決しなければならない問題だ。歴代の政権は全て、この特権階級と癒着して安泰を保ってきた。
 【労働法もヴァルガス政権の遺産か】もちろん。軍事政権を始め各政権は労働法と労組法の改正を叫びながら何もしなかった。この二つのためにブラジルの人件費は、高いものになった。労働法と労組を近代化しないと、ブラジルの産業は時代の波から落とされる。
 【時代のすうせいは、どう変わったか】ブラジルの左翼運動はMSTを除いて、労組も学生もキューバを模範とする社会運動はしなくなった。学生は、左翼運動より自分の将来に夢中だ。MSTのような過激思想は別として、革新思想は少しずつ持ったほうがよい。変わらないのはブリゾーラ氏。彼の演説を聞いていると六〇年代のテープを巻き返しているようだ。
 【現政権の宿題は】産業の近代化だ。現在ブラジルの輸出産業は、国際市場で完全に乗り遅れている。過大な債務の決済法は、輸出しかない。輸出が伸びなければ、債務で動けなくなる。手始めに、産業のネックになっている労働法と労組法の改正が必要だ。