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超大物がJICA理事長へ=緒方貞子前国連難民高等弁務官を内定=外務省外から初起用=クルド難民救済で活躍

8月27日(水)

 超大物がトップに就任へ――。日本政府は二十六日、十月に発足する独立行政法人・国際協力機構(JICA、現国際協力事業団)の理事長に、前国連難民高等弁務官の緒方貞子氏(七五)を内定した。川口順子外相が閣議後の記者会見で明らかにしたもので、二十九日の閣議で正式に決定する。現在、アフガニスタン復興支援日本政府代表を務める緒方氏は、世界各地の難民問題を最前線で見続けてきたエキスパート。JICAでは従来、外務省出身者が歴代総裁を務めたが、初の省外からの起用となる。ブラジル国内では環境問題や貧困改善などの課題を抱えるだけに、国際協力の現場を知る緒方氏の就任は好影響をもたらしそうだ。

 昨年一月の田中真紀子元外相の更迭後、イメージアップを図る小泉首相に外相就任を打診されながらも固辞した緒方氏。
 JICA労働組合が今年三月に実施したアンケートでは川上隆朗現総裁の続投を望む声は少なく、国際的にも知名度の高い緒方氏の起用を求める声が最多だったという。民間人起用にこだわる川口外相は、緒方氏に就任を打診。すでに内諾を得ているという。任期は四年となる。外相は「JICAは開発途上国で評価は高いが、先進国では十分知られていない。緒方氏の国際経験と感覚を生かし、国際的に評価される組織にして欲しい」とその手腕に期待する。
 東京都出身の緒方氏は一九五一年、聖心女子大卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で博士課程修了。国連日本政府代表部公使や国連人権委員会日本政府代表、上智大学外国語学部長などを歴任。九一年から二〇〇〇年までは国連難民高等弁務官も務めた。
 十年間を世界の難民救済に尽くしてきた緒方氏。九一年の就任当初、湾岸戦争の終結に伴ってイラクで発生したクルド難民問題が最初の活躍の場だった。
 イラク国内に取り残された四十万人のクルド難民を、従来の慣例にとらわれず救済する決断を下したのが緒方氏だった。ヘリコプターに乗り、国境近くの現場を訪問した緒方氏は十二時間近くも歩きながら、難民たちに話をした。
 直後に戻ったテヘランでは疲労にもめげず、世界各国のメディアを対象にした記者会見で明快なやり取りを披露。地元紙が見出しに選んだ「小さな巨人」は、その後、緒方氏の愛称となったというエピソードも残る。
 緒方氏の内定について、JICAサンパウロ支所では「正式な通知がない段階だけに特にコメントは出来ない」と話している。