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明暗分かれる農業=生産能力のないMST

8月28日(木)

 【ヴェージャ誌】ブラジルの農業は過去十年、国家の未来を約束するような華々しい成果を上げる一方で、労せずして富の分配にあずかろうとする農地占拠運動(MST)グループ侵入の脅威で明暗を分けている。
 地理統計院(IBGE)は来年度の穀物生産は一億二千万トンで、今年同期比二三%増と未曾有の成績と発表。農産物は食糧で七百二十億レアルの貿易黒字をもたらし、大豆や砂糖、オレンジ・ジュース、コーヒーは、世界的にもその生産性が突出した。
 農産加工を含めた農業関連産業は、さらに農機具をはじめ農作業用小型機やコンピューターの売り上げまで伸ばし、国内総生産(GDP)の三〇%に達し、四〇%の雇用創出を生んだ。
 豊かな生産を上げる穀倉地帯は一方で、ユートピア建設を謳うMSTの脅威にさらされている。革命運動を基本とし固有資産の略奪、家畜の窃盗・密殺、施設の破壊、略奪を常套手段としている。取り締まる政府機関は、MST後援団体に管理を任せて頼りにならない。ステジレMST代表の頭には、生産技術や生産性に関する興味は全くない。土地分配だけだ。
 前政権は、五十万世帯の入植のために二百五十億レアルをつぎ込んだ。一世帯当たり五万レアルの割合だ。タクシー二台が買える金額だが、一世帯当たりの収入は最も成績がよい家族で一カ月一最低賃金という状態。経営能力のない入植者に政府が、いくら営農資金をつぎ込んでもドブにゼニを投げ込む愚の繰り返しではと疑問視されている。
 農業技術の発達により、未利用の大農場はほとんどなくなった。未利用地は、アマゾン地方と不毛の地が残るくらいとなった。休耕地は、未利用地ではない。農地改革院の各州支部が未利用地探しで奔走しているが、徒労であった。
 メキシコでも一九四〇年、農地改革を行い政府は小農に土地と営農資金を提供した。しかし機械化とハイテク化した大規模農業には歯が立たなかった。メキシコ政府は一九八〇年、農地改革の失敗を認め農地解放は国家経済にとって何ら貢献しないと結論を出した。
 政府幹部は、大農場を手作業で開拓することは時代遅れで、その後の入植者の面倒をみる無謀さを知っている。ただ大統領選挙で協力したスタジレMST代表とその信者、PT過激派をどう説得するかが悩みだ。