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二重に日系農家調査?=各地農協で混乱招く=農拓協調査に横ヤリ=JICA委託で別団体も

8月30日(土)

 農業拓殖協同組合中央会(原林平会長、以下農拓協)が昨年八月から、独自に進めていた日系農業者に関する実態調査。これとは別に、日系農家活動調査委員会(羽場久夫代表=グランデ・サンパウロ農業協同組合)が国際協力事業団(JICA)の委託を受け、同様の調査を行い、各地方での混乱を招いている。原会長は「(JICAは)農拓協が調査を行っていることを、知っているはずなのに」と困惑を隠せない。さまざまな思惑からか、三者の話し合いは行われず、問題は水面下でくすぶり続けていたが、二十八日午後、JICAサンパウロ支所で三者合同の調整を行った。とりあえず「協力して、調査を進めていこう」との合意に達したが、JICAから助成金を受けている同委員会と農拓協がどういう形ですり合わせを行うのかが、これからの課題となる。

 コチア、南伯解散後、日系農家に関するデータがないことから、農拓協は昨年三月の執行部改選後、重点事業として日系農業実態調査を昨年八月から、独自に行ってきた。
 しかし、今年五月ごろ、地方の農協関係者から「(農拓協の調査とは別に)JICAが同じような実態調査を実施している」との問い合わせが相次いだ。
 調査を実際に行ったのは、JICAに委託を受けた日系農家活動調査委員会。その委員会の羽場代表や白石和久氏が所属するグランデ・サンパウロ農協は、農拓協の法人会員でもあることから、農拓協側は真意を図りかねる状況でもあった。
 原農拓協会長はニッケイ新聞の取材に「なぜ二重に調査をする必要があるのか。JICAは(農拓協が)調査を知っているはずなのに」と困惑顔をみせていた。
 農拓協は、この状況を受け、七月八日に実態調査の中間報告を行い、日系農業者に対して行った約一年間の調査結果を発表した。
 羽場代表は「JICAからの調査依頼は何度も断ったが、結局は受けた。農協としてではなく、個人のつながりを中心に調査依頼を行った」と話し、「調査そのものが重複することは、問題と感じていたし、農拓協が調査を行っていることは(JICAの依頼以前から)知っていた」と吐露する。
 この間、両者間の話し合いや連絡がなかったことからも、両者間にわだかまりがあったことは否めない。 今月十四日、近藤四郎農拓協理事は、来年の農協セミナーについての打ち合わせでJICA支所を訪問。その時初めて、JICA側から、調査についての説明があり、「協力してほしい」との発言があったという。
 なお、十五日の取材で、佐々木弘一日系社会支援業務総括は「以前、農拓協の長田勝事務局長に話はしていた」と話しているが、同事務局長は言を異にしている。
 問題が深刻化する前に修復を図ろうと、二十八日午後、JICAサンパウロ支所で三者が調整を行った。
 小松雹玄JICA支所長は「(日本からの来賓が多く訪伯した)七月の戦後五十周年記念式典までに、データが必要と思った」と依頼の経緯を説明し、「農拓協側からは(実態調査が)五年ほどかかるという話を聞いていたので、羽場さんたちに依頼したが、農拓協の調査がそんなに進んでいるとは思わなかった」と話す。なお、委員会からの報告書は(九月現在)完成していない。
 小松支所長は重ねて「農拓協側から何か提案があれば、助成もあり得る」と明言した。
 「なぜ、ひとこと言ってくれなかったか」という原会長に対し、羽場代表は「迷惑をかけた」と謝罪し、これからは双方が協力して実態調査を進めていく方向で話はまとまった。
 助成金がでている委員会と、独自に調査をする農拓協が、どのように協力して調査を行っていくのか。その折り合いが注目される。JICAも含めて、綿密な連絡を取り合える信頼関係を再構築することが早急な課題のようだ。