9月3日(水)
在日ブラジル人の母親のうち、六一・五%が育児ストレスを抱える。だが、その程度は日本人、在日外国人に比べて最も低い。清水嘉子・静岡県立大学看護学部母性看護学助産学講師が在日外国人の子育てを支援しようと育児問題を調査中だ。既に、『在日ブラジル人の母親の育児ストレス』(増田末雄元常葉学園大学共著)、『在日韓国・中国・ブラジル人の母親の育児ストレスー日本の母親との比較からー』の論文を発表。さらに今後、本国で子供を育てている母親と比較、研究結果をまとめる予定だ。
清水講師は助産師や保健師として地域の出産、育児に関わり、母親たちの喜怒哀楽をみてきた。自身、三人の子供を持つことから共感できる面も多かった。
静岡市にはブラジル人をはじめ在日外国人が集住。国際化の進む日本では、異文化の中での子育てを認識することも重要だと、育児問題について、調査に乗り出した。
在日ブラジル人を対象にした調査は九八年十一月から十二月にかけ、浜松市内の保育所・託児所に子供を預けている母親百四十一人を対象にポルトガル語によるアンケート方式で実施した。
さらに、〇〇年八月から九月、〇一年八月から十一月まで、在日ブラジル、韓国、中国人と日本人の母親を調査。尺度表に照らして比較した。
全体の七五・三%が日本とブラジルでは子育て(の方法)が違うと感じている。特に教育面での相違が大きく、日本の教育はすべてがそろっているとの好意的な意見の一方、厳しい、行事が多いとの指摘もあった。
不満の有無について、三二・三%があると答えた。主因は「子供との時間がない」、「帰国後に不安がある」ことなど。不満がない人(二五・四%)は、理由として、日本の治安の良さ、施設設備の充実さを挙げる。
育児ストレスについて、全体の六一・五%が抱えている。具体的には、「仕事との両立」が最多で、「子供の自己本位な特性」、「帰国後の不安」が続く。
在日外国人、日本人の母親の間での比較では、育児ストレスはブラジルが最も低く、中国、韓国、日本の順に高くなる。育児幸福感はその逆で日本の母親が最低だった。
ストレスの内容について、韓国・中国の母親は子供の言語能力、ブラジルの母親は仕事との両立を問題にした。日本の母親は、子供が犯罪に巻き込まれるか心配だと、治安面を挙げた。
ストレスへの対処は韓国・中国人では「人の助けを得る」が多いの対し、ブラジルの母親では「諦め・我慢」が目立った。ブラジル人の七一%が在日年数が五年以上であり、日本への定住化が関係しているのではないかとみられている。