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新しい産業―ワニ飼育―サンパウロ州でも―いい値「肉」と「皮」-神保さんしっかり投資―トレメンベー

9月5日(金)

 トレメンベー市に、日系ワニ生産者がいる。三千平米の土地に二百七十匹のワニを飼い、来年を目処に出荷しようと試行錯誤を繰り返している。牛、鶏、豚などの家畜はもちろんとして、ダチョウの飼育なども広く知られている現在。サンパウロ州の新産業として、ワニ生産が産声を上げた。

 「味は、魚と鶏肉の間くらいでクセがなくてどんな味付けにも合う」と、自信を持って語るのは神保マツヒコさん(三世、四七)。ワニ(和名、クチヒロカイマン)は、牛肉や鶏肉と比較して、コレステロールが少ない。しかも、脂肪と肉がはっきり分離しているため、脂肪を取り除けばさらに健康的な食肉になる。二歳前後(六キロ程度六五%が食肉)で出荷。価格は卸値でキロ当たり三十五レアル前後、皮は二十平方センチメートルで三十ドルほどだとか。
 マツヒコさんはサンパウロ州でも、数少ないワニ生産者の一人だ。マツヒコさんによれば「アマゾナス州やマット・グロッソ州リオデジャネイロ州バッハ・ド・リベイロ市では、生産されている様子。しかし、サンパウロ州では、タウバテ市に一軒、カンピーナス市近くのアルト・ノゲイラ市に一軒あるだけ」とのこと。
 きっかけは、四年前の二日間。ピラシカーバ市USP農学部ワニ生産勉強会に参加。相次ぐ米の価格下落で、新規事業を探していたマツヒコさんは、ワニに魅力を感じてUSPに生産支援を打診した。USP側でも、試験施設の必要性があり両者意図が合致し実現の運びとなった。
 その後、百二十匹(オス二十、メス百)を一匹二百五十レアルで購入した。現在は繁殖に成功し百五十匹の卵をかえし、計二百七十匹まで増やした。「将来二千匹をかえせるようになれば、利益が出るようになる」と明かす。エサは、体重の七パーセントの鶏肉や牛肉を週一回与えている。えさを与えるほかは、掃除と温度管理程度と手間がかからない。
 三千平米の土地に、十五万レアル投資した同施設は、檻が二十とビニールハウスが二つ、孵化施設もある。他の生産者に先駆けて、生後間も無いワニが暮らす小型のハウスも試験的に導入した。今後、さらに十五万レアルを投資し、もう一つのビニールハウスや冷蔵施設、処理施設を建設する予定だ。
 「ワニは、人が来たら逃げ出すような臆病な性格だが、ワニ同士は喧嘩する。やられたワニは別の檻に移すが、どこの檻でもいじめられますね」とワニへの観察眼も鋭い。「体重を計るときがやはり最も難しい。メスワニに、以前指をかまれた」と苦労話も笑いながら語る。
 「未出荷のため、利益は出ていないが来年から初出荷する予定。利益が出はじめるのは、初めてから七年くらい経ってから。皮は輸出も考えている」と長い目で見ている様子だった。
 [クチヒロカイマン]学名Caiman Latirostris。南米中部、特にアマゾン流域の南部に生息。全長は約二・五メートル。