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在聖総領事館=公館投票へ準備開始=300人にアンケート=9割が直接投票希望=来年6月参院選が本番

9月5日(金)

 来年六月の参議院選挙から、従来の郵便投票に加えて、サンパウロ総領事館でも初めて公館投票が導入される。今年五月に国会で成立した公職選挙法の改正に伴うもので、海外有権者の便宜を図る試みだ。世界最大の有権者を抱える同総領事館は、万全の対策を練ろうと管内で選挙人登録をした人から無作為に抽出した三百人を対象にアンケートを実施。予想を上回る約九割が、公館投票を望むと回答した。アンケート結果をもとに、同総領事館は約一週間の投票期間中に約七千五百人の有権者が訪れる、と推定。担当する日系社会班の中須洋治領事は「初の試みだが、トラブルや混乱は許されない」と、来年度の最重要課題に位置づけ、万全を期す方針だ。

 在外選挙を担当する日系社会班の中須洋治領事は、事前に有権者の投票行動を把握したいと今年六月、管内で選挙人登録し、総領事館から百キロ圏内に住む八千七百四十一人の中から、無作為に三百人を抽出。郵便でアンケートを送付した。回答を得た百六十四人のうち、前回選挙では四七%に当たる七十八人が郵便投票をしたという。
 さらに「公館投票ならば来館するか」との問いについては,八六%に相当する百四十二人が「行く」と回答。この数字をもとに、日系社会班では最大で七千五百人が期間中に来館するとの見通しを立てた。
 投票期間については、外務省と総務省が検討中でまだ決まっていないが、約一週間になる、と同班は推測。「単純平均でも一日当たり、約千八十人が来館することになる」。当初の予想を大幅に上回る数字が出たと中須領事はいう。
 通常、同総領事館の一日の来館者は約七百人。「実際には五割ほどかも知れないが、万全を期すために多めの人数を予想して対策を図る」と中須領事。同総領事館における来年度の最重要課題と位置づけ、八日に着任する石田仁宏総領事にも経過を報告する。
 八月末までに同総領事館管内で登録したのは、海外公館中最多の一万三千五十五人。今年三月時点ではニューヨークが三千二百人、ロサンゼルスが二千八百人、サンフランシスコが二千七百人、ロンドンが二千五百人と続く。
 本来ならば、文協など日系諸団体を投票会場にすれば、総領事館の混乱も少なくなるが、治外法権が及ぶ範囲での投票となると管内では、総領事館か総領事公邸の二個所のみ。日系社会班では、出来るだけ混乱を避けるために有権者の投票日を指定して来場してもらうことも検討したが、総務省からは「投票行動は自由でないといけない」とストップがかかった。このため、総領事館が入るパウリスタ大通りのトップセンターを舞台に様々な対策を練る。
 最大の問題点は、投票会場でいかに来場者をスムースにさばくかだ。有権者の多くが高齢者で、慣れない政党名や候補者に戸惑ったり、投票用紙への記入に手間取ることが予想される。「日本なら入場から五分で終わるが、こちらでは時間が読めない」と中須領事。
 投票前にパスポートなど顔写真の入った身分証明書や、登録証の提示など確認事項も多いため、職員に加えて臨時のアルバイトも確保。本番までに模擬演習などを重ねて、当日の混乱を避ける予定だ。
 さらに車での来館者も多いためすでに約二百台の駐車場も確保済みだという。 また、来場者の安全確保にも配慮する。入管法改正直後、「デカセギ」ビザ発給を求めた日系人が、総領事館周辺に列をなした前例もあるが、中須領事は「待合室をきちんと設ける」と語る。
 長年、日系社会が待ち望んだ公館投票。関係者の取り組みが続く。