9月9日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙】トランプ、宝くじ、競馬、ビンゴ、スロットマシーン、ビッショ(動物札合わせ)…。ギャンブルを侮ってはいけない。ギャンブル依存症になると、借金を重ねた挙句、高利貸の手にかかって車、家、友人、配偶者を失うはめになる。ここ数年来増加してきたギャンブル依存症の「患者」は保健省の統計には表れないが、専門家は依存者が数年以内に五百三十万人を超えると予想する。
ギャンブル依存症は死に至ることもある。サンパウロ総合大学(USP)医学部のシウヴィア医師の修士論文によると、ギャンブル依存者の男性の六%、女性の二二%が自殺を試みたという。
またギャンブル依存者の実態も同論文は明らかにした。依存者の平均年齢は四十一歳で女性の依存者のそれは四十四歳。依存者の多くは白人、既婚者、子どもが二人いる、無職、カトリック信者、平均就学年数は四年という特徴を持つ。調査対象者のうち、男性の五九%、女性の八二%がビンゴ、ビデオゲーム機、スロットマシーンといった今風のギャンブルを好み、男性(女性)の五八%(七二%)に喫煙、一八%(四%)に飲酒、四%(六%)に麻薬使用の習慣があった。
「近い将来、ギャンブルをする人間はブラジル国民の二、三%を占めるようになる」とUSP精神医学研究所のタヴァーレス精神科医は予想する。同医師によると、女性ギャンブラーは男性より平均四倍の速さで増加しているという。
九七年以降、ギャンブル依存症患者を診てきた同医師は、ギャンブルで金をもうけることは見果てぬ夢だと結論づけた。「負けがわかると、負けを取り返そうとしてもっとかけるようになり、さらに負ける」。悪循環にハッピーエンドはない。負けが込むと友人や家族に金を借りるようになり、最後は高利貸に駆け込む。そしてどうにも首が回らなくなった多くの人は自殺に向かう。
しかし、依存から抜け出すための治療を受ける人は少なく、男性の二三%、女性の一二%しか治療を受けていない。「無名ギャンブラーの会」はギャンブルをやめ、家族、社会への復帰を目的に毎週集会を開き、依存症の治療を実践している。
現在、一年間に約五億レアルの金がギャンブルで動くという。ビンゴとスロットマシーンの増加が最も激しく、サンパウロ市には数百のゲーム機を抱えるビンゴ店が二百五十軒もある。バール、ランショネッテ、パン屋にあるスロットマシーンは二十五万台を超える。
ディアス検事は無害に思えるゲームとばくが「イタリア、スペインのマフィアと癒着している」と述べた。麻薬密売で得た金はビデオビンゴやスロットマシーンの輸出入業者により、ブラジルで資金洗浄されているとの疑惑がある。ブラガンサ・パウリスタ犯罪研究所は、単純なものから高性能なものまで、すべてのゲーム機には持ち主が機能を変更できる、「スイッチ」と呼ばれるコントロール装置が備わっていることを確認した。
九八年に制定され、ペレ法と呼ばれる法令第九千六百十五号は、ビンゴ店にイカサマゲーム機を設置してはならないと定めた。しかし、サンパウロ市では多くのビンゴ店が許可なくゲーム機を設置している。
サンパウロ市警組織犯罪捜査課(Deic)は三十軒のビンゴ店を捜査対象としたが、捜査は進んでいない。そのため、スロットマシーンは警察、市役所、裁判所の監査を受けずに野放し状態となっている。