9月9日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙】都市周辺地域では、大学生になることは夢の第一歩を踏み出すことだ。石工、金属工、運転手、主婦の息子、娘たちは家族の中で初めて大学教育を受ける。こうしたパイオニア精神はここ数年来、大サンパウロ市圏の貧困地区に私立の大学、短期大学が進出してきた事実が裏付けている。公立大学もまた周辺地域住民に近い存在になりつつある。
「大学で勉強するなんて思いもよらなかった。義理の姉が近くの大学で勉強しているのを聞いて私もその気になった」と話すエリザベッチさんはずっと公立学校に通っていたが、今は五百レアルの月給を全部学費につぎ込む。「卒業証書を手にした時、よかったと思えるでしょう」。エリザベッチさんは金属工だった母親の誇りだ。
ウェリントンさんは月給五百レアルをもらっているが、毎月五百六十レアルの学費を払うために両親の助けを借りている。両親は高校を卒業していない。デート代も残らないが、文句は言わない。「今じゃ、大学を出ないと誰にも明るい未来は待っていない」。
昨年、ブラジルの大学生が答えた教育省(MEC)のアンケートによると、大学生の約七五%が大学教育を受けていない両親の子どもで、ほぼ半数(四二・四%)が六百一レアルから二千レアルの月収を得る家庭出身だった(六百レアル以下は一三・四%、二千一レアルから四千レアルは二五・三%、四千一レアルから一万レアルは一四・三%、一万レアル超は三・五%)。教育学と数学専攻の学生に低所得層出身者が多く、医学と建築学専攻の学生に高所得層出身者が多かった。大学生の三五・九%が全通学期間中、仕事と勉学を両立していた。ブラジルには現在三百万人の大学生がいるが、二百万人以上が私立大学に通っている。私立大学の学費の月額は最低四百レアルだという。
「最大の問題は多くの大学生が学費を払えずに辞めることだ」とサンパウロ市東部地区の地域社会リーダーの一人は言う。連邦政府の奨学金は卒業後に返済する必要があるため、学生には人気がない。大学は一部学生に奨学金を賞与するが、対象者数は十分でない。大学側にとっては学費未払いが大きな問題の一つとなっており、期限内に支払う学生には学費の減額を行う大学が多いという。